稼働率の計算方法と直列、並列についてゆるーくわかりやすく解説



1. 稼働率
稼働率(Availability)の計算方法は、システムの可用性のための指標です。稼働率を計算する基本的な式は次の通りです。
1.1. 稼働率の計算式
稼働率は平均故障間隔MTBFと平均修理時間MTTRの割合で表され、次のように計算されます。
\[ \text{稼働率} = \frac{\text{MTBF}}{\text{MTTR}+\text{MTBF}} \]
2. 直列システムの稼働率
直列システムでは、すべての構成要素が正常に動作していなければ、システム全体が稼働しません。たとえば、直列につながった複数の装置があり、どれか一つでも故障すると、システム全体が停止します。
2.1. 直列システムの稼働率の計算式
直列システムの稼働率は、各構成要素の稼働率を掛け合わせて計算します。
\[ A_{\text{series}} = \prod_{i=1}^n A_i =A_1 \times A_2 \times A_3 \times \cdots \times A_n \]
- \(A_{\text{series}}\):直列システム全体の稼働率
- \(A_1, A_2, A_3, \ldots, A_n\):各構成要素の稼働率


2.2. 直列の計算例
構成要素 \(A_1\), \(A_2\), \(A_3\) の稼働率がそれぞれ 0.95, 0.98, 0.99 だとします。
\[ A_{\text{series}} = 0.95 \times 0.98 \times 0.99 \approx 0.921 \]
直列システム全体の稼働率は約 92.1% になります。
3. 並列システムの稼働率
並列システムでは、どれか一つの構成要素が稼働していれば、システム全体が動作可能です。冗長性が高く、信頼性の向上に役立ちます。
3.1. 並列システムの稼働率の計算式
並列システムの稼働率は、次の式で計算します。
\[ A_{\text{parallel}} = 1 – \prod_{i=1}^n (1 – A_i) \]
- \(A_{\text{parallel}}\):並列システム全体の稼働率
- \(A_1, A_2, A_3, \ldots, A_n\):各構成要素の稼働率
- \((1 – A_i)\):各構成要素が停止している確率。この$1-A_i$は余事象の考え方です。


3.2. 並列の計算例
構成要素 \(A_1\), \(A_2\), \(A_3\) の稼働率がそれぞれ 0.95, 0.98, 0.99 だとします。
\[ \begin{align*}A_{\text{parallel}} &= 1 – (1 – 0.95) \times (1 – 0.98) \times (1 – 0.99) \\ & = 1 – (0.05 \times 0.02 \times 0.01) \\ &= 1 – 0.00001 = 0.99999 \end{align*}\]
並列システム全体の稼働率は約 99.999% と非常に高い値になります。
4. 例題
4.1. 例題1:基本的な稼働率計算
ある機器のMTBFが100時間、MTTRが5時間であるとします。この機器の稼働率を求めなさい。
- 稼働率の公式は\[ \text{稼働率} = \frac{\text{MTBF}}{\text{MTTR} + \text{MTBF}} \]
- 与えられた値を代入します。\[ \text{MTBF} = 100 \quad \text{時間}, \quad \text{MTTR} = 5 \quad \text{時間} \]
- よって、\[ \text{稼働率} = \frac{100}{5 + 100} = \frac{100}{105} \approx 0.95238 \]
- システムの稼働率は約95.238%となります。
4.2. 例題2:直列システムの稼働率計算
3つの構成要素 \(A_1, A_2, A_3\) で構成された直列システムがあります。それぞれの要素の稼働率が以下のように与えられています。 \[ A_1 = 0.9, \quad A_2 = 0.95, \quad A_3 = 0.99 \] この直列システム全体の稼働率を求めなさい。
- 直列システムの稼働率は、全ての構成要素の稼働率を掛け合わせて求めます。\[ A_{\text{series}} = A_1 \times A_2 \times A_3 \]
- したがって、数値を代入すると、
\[ \begin{align*} A_{\text{series}} &= 0.9 \times 0.95 \times 0.99 \\ 0.9 \times 0.95 &= 0.855 \\ 0.855 \times 0.99 &= 0.84645 \end{align*} \] - よって、システムの稼働率は84.645%となります。
4.3. 例題3:並列システムの稼働率計算
2つの構成要素 \(A_1, A_2\) からなる並列システムがあります。
\[ A_1 = 0.98, \quad A_2 = 0.95 \] この並列システムの稼働率を求めなさい。
- 並列システムの稼働率は、\[ A_{\text{parallel}} = 1 – (1 – A_1)(1 – A_2) \]
- 与えられた値を代入します。\[ 1 – A_1 = 1 – 0.98 = 0.02 \] \[ 1 – A_2 = 1 – 0.95 = 0.05 \]
- よって、\[ A_{\text{parallel}} = 1 – (0.02 \times 0.05) = 1 – 0.001 = 0.999 \]
- 稼働率は99.9%となります。
4.4. 例題4:直列+並列構成のシステム
あるシステムは2つのブロックから構成されています。
- ブロック1は直列構成で、要素 \(A_1 = 0.9\) と \(A_2 = 0.95\) が直列につながっています。
- ブロック2は並列構成で、要素 \(A_3 = 0.9\) と \(A_4 = 0.95\) が並列につながっています。
これら2つのブロックを直列接続したシステム全体の稼働率を求めなさい。
- ブロック1(直列)の稼働率を求めます。\[ A_{\text{block1}} = A_1 \times A_2 = 0.9 \times 0.95 = 0.855 \]
- ブロック2(並列)の稼働率を求めます。\[ A_{\text{block2}} = 1 – (1 – A_3)(1 – A_4) = 1 – (1 – 0.9)(1 – 0.95) \]
$1 – A_3 = 0.1, \quad 1 – A_4 = 0.05$となるので、
\[ A_{\text{block2}} = 1 – (0.1 \times 0.05) = 1 – 0.005 = 0.995 \] - システム全体はブロック1とブロック2が直列接続されているため、\[ A_{\text{system}} = A_{\text{block1}} \times A_{\text{block2}} = 0.855 \times 0.995 = 0.850725\]
- よってシステム全体の稼働率は約85%となります。