モーメント母関数(積率母関数)の意味と性質について

はるか
はるか
期待値のなかに$e^{tX}$がある。なにこれ?
ふゅか
ふゅか
それはモーメント母関数よ。
はるか
はるか
母関数?漸化式のやつ?
ふゅか
ふゅか
それとはまた別の概念。

1. モーメント母関数とは?

モーメント母関数 \( M_X(t) \) は、確率変数 \( X \) に対して次のように定義される。

$$M_X(t) = E[e^{tX}] $$

tによってはモーメント母関数は存在しません。

モーメント母関数は積率母関数とも呼ばれます。

2. モーメント母関数の特徴

はるか
はるか
これがあると、一体何がうれしい?
ふゅか
ふゅか
そうね、分散と期待値が求められるわ。

モーメント母関数の特徴は微分したときに現れます。モーメント母関数の1階微分と2階微分はそれぞれ次のようになります。

2.1. 1階微分

モーメント母関数 \( M_X(t) \) の1階微分は、

\[ M_X'(t) = \frac{d}{dt}E[e^{tX}] \] です。ここで、\( t = 0 \) の時、 \[ M_X'(0) = E[X] \] となります。これは \( X \) の期待値になります。

2.2. 2階微分

同様に、モーメント母関数の2階微分は、 \[ M_X”(t) = \frac{d^2}{dt^2}E[e^{tX}] \] と表されます。\( t = 0 \) の時、 \[ M_X”(0) = E[X^2] \] が得られます。

2.3. 期待値と分散

期待値と分散は次のように表されます。

$$E[X]=M_X'(0)$$

$$V[X]=E[X^2]-(E[X])^2$$

$$=M_X’’(0)-M_X'(0)^2$$

これらの性質を利用することで、モーメント母関数は確率変数の期待値や分散などを求めることができます。

ふゅか
ふゅか
n階微分を行ったら、$E[X^n]$がででくるわ。

3. なぜ微分すると都合がいいのか?

計算を実際に行うと、このような性質が出てくることがわかります。計算の際には$e^x$のマクローリン展開を用います。

指数関数 \( e^x \) のマクローリン展開は次のように表されます。

\[ e^x = 1 + x + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \frac{x^4}{4!} + \cdots \]

モーメント母関数 \( M_X(t) = E[e^{tX}] \) において \( e^{tX} \) をマクローリン展開すると、

\[ M_X(t) = E[1 + tX + \frac{(tX)^2}{2!} + \frac{(tX)^3}{3!} + \cdots] \] \[ = 1 + tE[X] + \frac{t^2E[X^2]}{2!} + \frac{t^3E[X^3]}{3!} + \cdots \]

となります。

はるか
はるか
なるほど、この式をtで微分するのか。

3.1. 1階微分を行う

1階微分を行うと、

\[ M_X'(t) = E[X] + tE[X^2] + \frac{t^2E[X^3]}{2!} + \cdots \] となり、\( t = 0 \) の時 \( M_X'(0) = E[X] \) が得られます。

3.2. 2階微分を行う

2階微分を行うと、

\[ M_X”(t) = E[X^2] + tE[X^3] + \frac{t^2E[X^4]}{2!} + \cdots \] となり、\( t = 0 \) の時 \( M_X”(0) = E[X^2] \) が得られます。

PR