モーメント母関数(積率母関数)の意味と性質について





1. モーメント母関数とは?
モーメント母関数は積率母関数とも呼ばれます。
2. モーメント母関数の特徴


モーメント母関数の特徴は微分したときに現れます。モーメント母関数の1階微分と2階微分はそれぞれ次のようになります。
2.1. 1階微分
モーメント母関数 \( M_X(t) \) の1階微分は、
\[ M_X'(t) = \frac{d}{dt}E[e^{tX}] \] です。ここで、\( t = 0 \) の時、 \[ M_X'(0) = E[X] \] となります。これは \( X \) の期待値になります。
2.2. 2階微分
同様に、モーメント母関数の2階微分は、 \[ M_X”(t) = \frac{d^2}{dt^2}E[e^{tX}] \] と表されます。\( t = 0 \) の時、 \[ M_X”(0) = E[X^2] \] が得られます。
2.3. 期待値と分散
期待値と分散は次のように表されます。
$$E[X]=M_X'(0)$$
$$V[X]=E[X^2]-(E[X])^2$$
$$=M_X’’(0)-M_X'(0)^2$$
これらの性質を利用することで、モーメント母関数は確率変数の期待値や分散などを求めることができます。

3. なぜ微分すると都合がいいのか?
計算を実際に行うと、このような性質が出てくることがわかります。計算の際には$e^x$のマクローリン展開を用います。
指数関数 \( e^x \) のマクローリン展開は次のように表されます。
\[ e^x = 1 + x + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \frac{x^4}{4!} + \cdots \]
モーメント母関数 \( M_X(t) = E[e^{tX}] \) において \( e^{tX} \) をマクローリン展開すると、
\[ M_X(t) = E[1 + tX + \frac{(tX)^2}{2!} + \frac{(tX)^3}{3!} + \cdots] \] \[ = 1 + tE[X] + \frac{t^2E[X^2]}{2!} + \frac{t^3E[X^3]}{3!} + \cdots \]
となります。

3.1. 1階微分を行う
1階微分を行うと、
\[ M_X'(t) = E[X] + tE[X^2] + \frac{t^2E[X^3]}{2!} + \cdots \] となり、\( t = 0 \) の時 \( M_X'(0) = E[X] \) が得られます。
3.2. 2階微分を行う
2階微分を行うと、
\[ M_X”(t) = E[X^2] + tE[X^3] + \frac{t^2E[X^4]}{2!} + \cdots \] となり、\( t = 0 \) の時 \( M_X”(0) = E[X^2] \) が得られます。