更新:2024/09/15

数列と関数、集合の有界・上界・下界の定義・具体例・例題について

はるか
はるか
有界な集合の話か。集合に対して上界と下界を見つけることが重要だね。
ふゅか
ふゅか
そうそう!集合のすべての要素がある数以下だったら、それを上に有界って言うんだよね。逆は、下に有界って言うね!

1. 有界な集合

1.1. 上界

集合 \( S \) に含まれるすべての数が、ある一つの数 \( K \) 以下であるとき、\( S \) は上に有界であるといい、その \( K \) を上界と呼びます。$S$の任意の要素を$x$とすると、

$$x\leq K$$

上界の最小値を上限といいます。

はるか
はるか
上限は上界の最小値。全ての上界の中で一番小さいものを見つけるのがポイント。

1.2. 下界

集合 \( S \) に含まれるすべての数が、ある一つの数 \( k \) 以上であるとき、\( S \) は下に有界であるといい、その \( k \) を下界と呼びます。$S$の任意の要素を$x$とすると、

$$x\geq k$$

下界の最大値を下限といいます。

はるか
はるか
下界はそれと逆で、集合のすべての要素がある数以上だったら、それを下に有界と言う。

1.3. 有界

集合 \( S \) が上に有界であり、かつ下に有界である場合、\( S \) を有界な集合と呼びます。$S$の任意の要素を$x$とすると、

$$k \leq x\leq K$$

2. 有界な集合の例題

2.1. 例題1

集合 \( A = \{ x \mid x \in \mathbb{R},1 \leq x < 5 \} \) が有界であるか、上界と下界が存在するか判定してください。

集合 \( A \) の要素は \( x < 5 \) なので、任意の \( x \geq 5 \) が上界になります。したがって、最小の上界(上限)は \( \sup A = 5 \) です。

集合 \( A \) の要素は \( x \geq 1 \) なので、任意の \( x \leq 1 \) が下界になります。したがって、最大の下界(下限)は \( \inf A = 1 \) です。

集合 \( A \) は上界と下界が存在するので、有界です。

2.2. 例題2

集合 \( B = \{ x \mid x \in \mathbb{R} ,x^2 < 4 \} \) が有界であるか、上界と下界が存在するか判定してください。

条件 \( x^2 < 4 \) から、\( -2 < x < 2 \) です。したがって、集合 \( B \) の上限は \( \sup B = 2 \) であり、下限は \( \inf B = -2 \) です。

集合 \( B \) は上界 と下界  が存在するので、有界です。

2.3. 例題3

集合 \( C = \{ x \mid x \in \mathbb{N} ,x > 0 \} \) が有界であるか、上界と下界が存在するか判定してください。

自然数全体の集合であり、最大の数が存在しないため上界は存在しません。したがって、上限はありません。

一方、自然数の中で最小の数は \( 1 \) であり、これは下限です。したがって、集合 \( C \) の下限は \( \inf C = 1 \) です。

集合 \( C \) は上界が存在しないため、無界です。

2.4. 例題4

集合 \( D = \{ x\mid x \in \mathbb{R} ,-3 \leq x \leq 2 \} \) が有界であるか、上界と下界が存在するか判定してください。

集合 \( D \) の最大の数は \( 2 \) なので、上限は \( \sup D = 2 \) です。

集合 \( D \) の最小の数は \( -3 \) なので、下限は \( \inf D = -3 \) です。

集合 \( D \) は上界と下界が存在するので、有界です。

3. 有界な数列

3.1. 数列の有界性

数列 \(\{a_n\}\) が有界であるとは、正の定数 \(K\) が存在して

\[ |a_n| < K \quad (n \geq 1) \]

を満たすことを指します。つまり、全ての \(n \geq 1\) に対して \(|a_n|\) が定数 \(K\) 以内に収まることを意味します。

3.2. 有界な数列

有界な数列は、値が一定の範囲内に収まるものを指します。

 

3.3. 有界でない数列

有界でない数列は、例えば無限に遠くへ飛んでいく感じです。

4. 数列の例題

4.1. 例題1

数列 \(\{a_n\}\) を次のように定義します。

\[ a_n = \frac{1}{n} \quad (n \geq 1) \]

  1. この数列の上限と下限を確認しなさい。
  2. 数列が有界かどうかを判定しなさい。
  1. 数列 \(a_n = \frac{1}{n}\) の上限は、最初の項 \(a_1 = 1\) であり、下限は数列が無限に進むにつれて値が \(0\) に近づくため \(0\) です。
    • 上限:\(1\)
    • 下限:\(0\)
  2. 上限と下限がともに存在するため、この数列は有界です。

4.2. 例題2

数列 \(\{b_n\}\) を次のように定義します。

\[ b_n = (-1)^n \cdot n \quad (n \geq 1) \]

  1. この数列の上限と下限を確認しなさい。
  2. 数列が有界かどうかを判定しなさい。
  1. 数列 \(b_n = (-1)^n \cdot n\) の場合、奇数 \(n\) のとき \(b_n\) は負の値をとり、偶数 \(n\) のとき \(b_n\) は正の値をとります。そして、正の値は常に増加し、負の値は常に減少する。したがって、上界と下界は次のようになります。
    • 上限:存在しない
    • 下限:存在しない
  2. 上限も下限も存在しないため、この数列は有界ではありません。

4.3. 例題3

数列 \(\{a_n\}\) を次のように定義します。

\[ a_n = 128n \quad (n \geq 1) \]

  1. この数列の上限と下限を確認しなさい。
  2. 数列が有界かどうかを判定しなさい。
  1. 数列 \(a_n = 128n\) の場合、\(n\) が増加すると \(a_n\) の値も無限に増加します。
    • 上限:存在しない(数列は正の無限大に発散します)
    • 下限:\(n = 1\) のとき、最小値 \(a_1 = 128\) です。
  2. 上限が存在しないため、この数列は上に有界ではありません。しかし、下限は \(128\) であるため、下に有界です。
    • この数列は上に有界ではないが、下に有界です。

5. 有界な関数

5.1. 関数の有界性

関数 \( f \) が有界であるとは、ある \( K > 0 \) が存在して、

\[ |f(x)| < K, \quad x \in A \]

が成り立つことです。つまり、関数の絶対値\( |f(x)| \) が定数 \( K \) 以内に収まることを意味します。

5.2. 有界な関数

有界な関数は、グラフが一定の範囲内に収まるものを指します。

 

5.3. 有界でない関数

有界でない関数は、数列と同様に無限に遠くへ飛んでいく感じです。

6. 有界な関数の例題

6.1. 例題1

関数 \( f(x) = \frac{x}{1+x^2} \) の上限と下限を求め、その関数が有界かどうかを判定してください。

\( f'(x) = \frac{1 – x^2}{(1+x^2)^2} \) を計算し、\( f'(x) = 0 \) を解きます。

\( 1 – x^2 = 0 \) なので、\( x = \pm 1 \) が得られます。

極値の計算を行うと次のようになります。

$$f(1) = \frac{1}{2} $$

$$f(-1) = -\frac{1}{2} $$

これらの点と \( x \to \pm\infty \) の極限を確認します。

極限の計算を行うと次のようになります。

$$\lim_{x \to \infty} \frac{x}{1+x^2} = \lim_{x \to \infty} \frac{ \frac{1}{x}}{1+ \frac{1}{x^2}} = 0$$

$$\lim_{x \to -\infty} \frac{x}{1+x^2} = \lim_{x \to -\infty} \frac{ \frac{1}{x}}{1+ \frac{1}{x^2}} = 0 $$

増減表を書くと次のようになります。

したがって、上限と下限は次のようになります。

上限: \( \frac{1}{2} \)

下限: \( -\frac{1}{2} \)

関数の上限が \( \frac{1}{2} \)、下限が \( -\frac{1}{2} \) であり、$|f(x)|\leq \frac{1}{2}$より、これらの範囲内で \( f(x) \) のすべての値が存在するので、この関数は有界です。

6.2. 例題2

関数 \( f(x) = x^2 \) の上限と下限を求め、その関数が有界かどうかを判定してください。

この関数の値は常に非負であり、最小値は \( x = 0 \) のときに取られます。

極限の計算を行うと次のようになります。

$$ \lim_{x \to \infty} x^2 = \infty $$

$$ \lim_{x \to -\infty} x^2 = \infty $$

最小値の計算を行うと次のようになります。

\( f(0) = 0 \)

上限と下限については次のようになります。

下限: \( 0 \)

上限: 存在しない

下に有界ではあるが、この関数は有界ではありません。

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