更新:2025/04/04

コーシー列の意味、収束列の関係と例題について

1. コーシー列

コーシー列(Cauchy sequence)とは、数列の収束に関する概念の一つです。具体的には、ある数列 \( \{a_n\} \) がコーシー列であるとは、次の条件を満たすことを意味します。

数列 \( \{a_n\} \) がコーシー列であるとは、任意の正の実数 \( \epsilon > 0 \) に対して、ある自然数 \( N \) が存在し、すべての \( m, n \geq N \) に対して次の不等式が成り立つ。

\[ |a_n – a_m| < \epsilon \]

つまり、数列 \( \{a_n\} \) の項同士の距離が、数列が進むにつれてどんどん小さくなり、最終的には任意に小さくできるということです。

ふゅか
ふゅか
「コーシー列」って名前、ちょっとかっこよくない?
はるか
はるか
……数列の項同士の距離が小さくなるやつ。
ふゅか
ふゅか
そうそう、進むほどにどの項同士も近づいていくってことよね!

1.1. 量化記号を利用した表記

コーシー列を量化記号を用いて表現すると、次のようになります。

数列 \( \{a_n\} \) がコーシー列であるとは、

\[ \forall \epsilon > 0, \ \exists N \in \mathbb{N}, \ \forall m, n \geq N \implies \ |a_n – a_m| < \epsilon \]

という条件を満たすことを意味します。

  • \( \forall \epsilon > 0 \): 任意の正の実数 \( \epsilon \) に対して、
  • \( \exists N \in \mathbb{N} \): ある自然数 \( N \) が存在し、
  • \( \forall m, n \geq N \): すべての \( m, n \) が \( N \) 以上のとき、
  • \( |a_n – a_m| < \epsilon \): \( a_n \) と \( a_m \) の距離が \( \epsilon \) よりも小さい。

2. コーシー列と収束列の関係

コーシー列 ⇔ 収束列」が成り立つ。

2.1. 意味

  • 収束列・・・数列 \( a_n \) がある値 \( a \in \mathbb{R} \) に収束するとは、 \[ \forall \varepsilon > 0, \exists N \in \mathbb{N}, \forall n \geq N \implies  |a_n – a| < \varepsilon \] となること。
  • コーシー列・・・数列 \( a_n \) がコーシー列であるとは、 \[ \forall \varepsilon > 0, \exists N \in \mathbb{N}, \forall m, n \geq N \implies |a_n – a_m| < \varepsilon \] となること。

2.2.  証明1:収束列 ⇒ コーシー列

\( \displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n = a \) と仮定します。任意の \( \varepsilon > 0 \) に対して、 \[ \exists N \in \mathbb{N}, \forall n \geq N,\ |a_n – a| < \varepsilon/2 \] とできるので、\( m, n \geq N \) に対して三角不等式より \[ |a_n – a_m| \leq |a_n – a| + |a – a_m| < \varepsilon/2 + \varepsilon/2 = \varepsilon \] したがってコーシー列です。

2.3. 証明2:コーシー列 ⇒ 収束列

実数列 \( (a_n) \) がコーシー列であると仮定する。つまり、

\[ \forall \varepsilon > 0,\ \exists N \in \mathbb{N},\ \forall m, n \geq N,\ |a_n – a_m| < \varepsilon \]

を満たすとする。任意の \( \varepsilon > 0 \) に対して、ある \( N \in \mathbb{N} \) が存在し、\( n \geq N \) に対して

\[ |a_n – a_N| < \varepsilon \]

が成り立つ。三角不等式を用いると、

\[ |a_n| \leq |a_n – a_N| + |a_N| < \varepsilon + |a_N| \quad (\text{for } n \geq N) \]

したがって、全体の列に対して以下のように上界を定められる:

\[ M = \max\left\{ |a_1|, |a_2|, \dots, |a_{N-1}|, |a_N| + \varepsilon \right\} \]

とおけば、すべての \( n \in \mathbb{N} \) に対して \( |a_n| \leq M \) が成り立つ。よって、列 \( (a_n) \) は有界である。

実数列が有界であることから、ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理より、収束する部分列が存在する。よって、ある部分列 \( (a_{n_k}) \) が存在して、

\[ \lim_{k \to \infty} a_{n_k} = \alpha \quad (\alpha \in \mathbb{R}) \]

となる。任意の \( \varepsilon > 0 \) を取る。

  • コーシー列であることから、ある \( N \in \mathbb{N} \) が存在して、\[ m, n \geq N \Rightarrow |a_n – a_m| < \varepsilon \]
  • また、部分列 \( a_{n_k} \to \alpha \) なので、ある \( K \in \mathbb{N} \) が存在して、\[ k \geq K \Rightarrow |a_{n_k} – \alpha| < \varepsilon \]

ここで、\( N’ = \max\{N, n_K\} \) とおく。

任意の \( n \geq N’ \) に対して、\( a_{n_k} \) の中に \( n_k \geq N’ \) を満たす項が存在する。したがって、

\[ |a_n – \alpha| \leq |a_n – a_{n_k}| + |a_{n_k} – \alpha| < \varepsilon + \varepsilon = 2\varepsilon \]

これは、任意の \( \varepsilon > 0 \) に対して \( |a_n – \alpha| < 2\varepsilon \) が成り立つことを意味する。よって、

\[ \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha \]

すなわち、コーシー列 \( (a_n) \) は実数 \(\alpha\) に収束する。

3. 例題

$a_n=\dfrac{1}{n}$はコーシー列であることを証明せよ。

任意に正の実数 \(\varepsilon > 0\) を与えられたときに,コーシー列の定義を満たすような \(N\) を指定すればよいことになります。

そこで,\(\displaystyle N > \frac{2}{\varepsilon}\) となるような自然数 \(N\) を一つ固定します。このとき,\(m,n \ge N\) を任意にとると,三角不等式などを用いて次のように評価できます:

\[ \bigl|a_m – a_n\bigr| = \Bigl|\frac{1}{m} – \frac{1}{n}\Bigr| \le \frac{1}{m} + \frac{1}{n} \le \frac{1}{N} + \frac{1}{N} = \frac{2}{N}. \]

ここで,\(N\) を \(\frac{2}{\varepsilon}\) より大きく選んでいるため,\(\frac{2}{N} < \varepsilon\) となります。したがって

\[ |a_m – a_n| < \varepsilon \]

が成り立つことがわかります。以上より,いかなる \(\varepsilon > 0\) に対しても対応する \(N\) を選ぶことができるので,\( \left(\frac{1}{n}\right) \) はコーシー列になります。

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