コーシーの平均値の定理の証明、イメージと具体例について



1. コーシーの平均値の定理とは
1.1. コーシーの平均値の定理
関数 \( f(x) \) と \( g(x) \) が閉区間 \([a, b]\) で連続であり、かつ開区間 \((a, b)\) で微分可能であり、さらに \( g'(x) \neq 0 \) (ただし、\( x \in (a, b) \) のとき)を満たすとします。このとき、ある \( c \in (a, b) \) が存在して次の関係が成り立ちます。
\[ \frac{f'(c)}{g'(c)} = \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \]
または、次のような形で計算することができる。
\[ (f(b) – f(a))g'(c) = (g(b) – g(a))f'(c) \]
1.2. 直感的なイメージ
この定理は、関数 \( f \) と \( g \) のグラフが区間 \([a, b]\) においてどのように変化するかを表現しています。この定理を用いると、関数 \( f \) の変化量と関数 \( g \) の変化量の比率が、ある点 \( c \) での接線の傾きの比率に等しいということが示されます。
1.3. 例


関数 \( f(x) = x^2 \) と \( g(x) = x + 1 \) を区間 \([1, 3]\) で考えます。
\( f(x) = x^2 \) と \( g(x) = x + 1 \) は両方とも区間 \([1, 3]\) で連続で、\((1, 3)\) で微分可能です。
微分を計算すると次のようになります。
- \( f'(x) = 2x \)
- \( g'(x) = 1 \)
コーシーの平均値の定理によれば、ある \( c \in (1, 3) \) が存在して次の関係が成り立ちます。
\[ \frac{f'(c)}{g'(c)} = \frac{f(3) – f(1)}{g(3) – g(1)} \]
それぞれの関数の値を計算すると次のようになります。
- \( f(3) = 3^2 = 9 \)
- \( f(1) = 1^2 = 1 \)
- \( g(3) = 3 + 1 = 4 \)
- \( g(1) = 1 + 1 = 2 \)
これを用いて、右辺を計算します。
\[ \frac{f(3) – f(1)}{g(3) – g(1)} = \frac{9 – 1}{4 – 2} = \frac{8}{2} = 4 \]
$\frac{f'(c)}{g'(c)}$は次のようになります。
\[ \frac{f'(c)}{g'(c)} = \frac{2c}{1} = 2c \]
このとき、
\[ 2c = 4 \]
\[ c = 2 \]
よって、\( c = 2 \) は区間 \((1, 3)\) に含まれるので、コーシーの平均値の定理の条件を満たしています。
2. 証明
コーシー平均値の定理の証明は、ロルの定理を利用して行います。
2.1. ロルの定理
関数 \( f(x) \) が閉区間 \([a, b]\) で連続であり、開区間 \((a, b)\) で微分可能で、さらに \( f(a) = f(b) \) であるとします。このとき、少なくとも1つの点 \( c \) (\( a < c < b \))が存在して、次の条件が成立します。
\[f'(c) = 0\]


2.2. 証明
新しい関数 \( h(x) \) を次のように定義します。
\[ h(x) = f(x) – \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \cdot g(x)\]
この関数 \( h(x) \) は、区間 \([a, b]\) で連続であり、\((a, b)\) で微分可能です。
\( h(a) \) と \( h(b) \) を計算します。
\[ h(a) = f(a) – \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \cdot g(a) \]
\[ h(b) = f(b) – \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \cdot g(b) \]
この2つの値が等しいことを確認します。
\[ h(b) – h(a) = \left( f(b) – \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \cdot g(b) \right) – \left( f(a) – \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \cdot g(a) \right)\]
\[ = f(b) – f(a) – \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \cdot (g(b) – g(a)) \]
\[ = f(b) – f(a) – (f(b) – f(a)) = 0 \] よって、\( h(a) = h(b) \) です。
区間 \([a, b]\) で連続で、\((a, b)\) で微分可能な関数 \( h(x) \) は、\( h(a) = h(b) \) であるため、少なくとも1つの点 \( c \in (a, b) \) が存在して \( h'(c) = 0 \) となります。\( h'(x) \) を計算します。
\[ h'(x) = f'(x) – \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \cdot g'(x) \]
ロルの定理から、\( c \in (a, b) \) が存在して、次が成り立ちます。
\[ h'(c) = f'(c) – \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \cdot g'(c) = 0 \]
この式を \( \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \) について解くと、
\[ f'(c) = \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \cdot g'(c) \]
よって、
\[ \frac{f'(c)}{g'(c)} = \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \]