更新:2024/08/17

ダランベールの判定法の定義・例題・性質について

はるか
はるか
無限級数が収束するか知りたい
ふゅか
ふゅか
ダランベールの判定法を使うと判定できるわ!

1. ダランベールの判定法とは

ダランベールの判定法は無限級数の収束性を調べるための手法です。特に、この判定法は正項級数に適用されます。ここでの「正項級数」とは、級数の全ての項が非負の数であるという意味です。

1.1. ダランベールの判定法の定義

無限級数 \(\sum_{n=1}^\infty a_n\) が与えられたとき、隣接する項の比 \(\frac{a_{n+1}}{a_n}\) を考慮します。この比の極限値(nが無限大に近づくときの極限)を \(R\) とします。

\[ R = \lim_{n \to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} \]

Rの値によって、級数が収束するか場合分けをします。

  • \(R< 1\) の場合、級数 \(\sum_{n=1}^\infty a_n\) は収束します。
  • \(R = 1\)の場合、この判定法からは級数の収束・発散が判断できません。
  • \(R > 1\) の場合、級数は発散します。
はるか
はるか
ふーん。R=1のときはわからないのか。

2. ダランベールの判定法の例題

ふゅか
ふゅか
3つの例題を解いてみよう!

2.1. 例1

級数 \(\displaystyle\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2}\) にダランベールの判定法を適用して収束するか調べなさい。

この級数の各項は \(a_n = \frac{1}{n^2}\) です。隣接する項の比は次のようになります。

\[ \frac{a_{n+1}}{a_n} = \frac{\frac{1}{(n+1)^2}}{\frac{1}{n^2}} = \left(\frac{n}{n+1}\right)^2 \]

ここで極限を取ると、

\[ R = \lim_{n \to \infty} \left(\frac{n}{n+1}\right)^2 = \lim_{n \to \infty} \left(1 – \frac{1}{n+1}\right)^2 = 1^2 = 1 \]

この結果 \(R= 1\) なので、ダランベールの判定法では収束か発散かを判断できませんが、$\dfrac{\pi^2}{6}$に収束することが知られています。

2.2. 例2

次の級数が収束するかダランベールの判定法を用いて求めなさい。

\[ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{n^2}{3^n} x^n \]

一般項 \( a_n = \frac{n^2}{3^n} x^n \) に対して、ダランベールの判定法を用います。比の極限を \( R \) とおくと、

\[ R = \lim_{n \to \infty} \left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right| \]

計算は次のようになります。

\[ R = \lim_{n \to \infty} \left|\frac{\frac{(n+1)^2}{3^{n+1}} x^{n+1}}{\frac{n^2}{3^n} x^n}\right| = \lim_{n \to \infty} \left(\frac{(n+1)^2}{n^2} \cdot \frac{|x|}{3}\right) \]

\[ R = \frac{|x|}{3} \cdot \lim_{n \to \infty} \left(\frac{(n+1)^2}{n^2}\right) = \frac{|x|}{3} \]

この \( R = \frac{|x|}{3} \) を用いて、収束の条件を次のように場合分けして考えます。

  1. \( R < 1 \) の場合: \[ \frac{|x|}{3} < 1 \quad \text{すなわち} \quad |x| < 3 \] この場合、級数は収束します。
  2. \( R > 1 \) の場合: \[ \frac{|x|}{3} > 1 \quad \text{すなわち} \quad |x| > 3 \] この場合、級数は発散します。
  3. \( R = 1 \) の場合: \[ \frac{|x|}{3} = 1 \quad \textすなわち \quad |x| = 3 \] この場合、収束するかどうかはダランベールの判定法ではわかりません。

2.3. 例3

次の無限級数が収束するかダランベールの判定法で判断しなさい。

\[ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{3^n}{n!} \]

まず、級数の一般項を \( a_n \) とします。

\[ a_n = \frac{3^n}{n!} \]

次に \( \frac{a_{n+1}}{a_n} \) を計算します。

\[ \frac{a_{n+1}}{a_n} = \frac{\frac{3^{n+1}}{(n+1)!}}{\frac{3^n}{n!}} = \frac{3^{n+1} \cdot n!}{3^n \cdot (n+1)!} \]

これを簡略化します。

\[ \frac{a_{n+1}}{a_n} = \frac{3^{n+1}}{3^n} \cdot \frac{n!}{(n+1)!} = 3 \cdot \frac{1}{n+1} = \frac{3}{n+1} \]

次に、\( n \) を無限大に飛ばしたときの極限を求めます。

\[ \lim_{n \to \infty} \frac{3}{n+1} = \lim_{n \to \infty} \frac{3}{n} = 0 \]

したがって、級数 \( \sum_{n=1}^{\infty} \frac{3^n}{n!} \) は 収束 します。

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