点と直線の距離の導出・法線ベクトルについて



1. 点と直線の距離の公式
$$d=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$
2. 座標をずらす証明


$[1]$ $a\neq0$であるとき
$ax+by+c=0$を直線lとする。
$xy$座標を$(x_0,y_0)$だけずらした座標系を$XY$座標とする。
$X=x-x_0,Y=y-y_0$となるから、$x=x_0+X,y=y_0+Y$より、直線の式に代入すると、
$$a(X+x_0)+b(Y+y_0)+c=0$$
となる。一方で、$X=x-x_0,Y=y-y_0$より、$XY$平面上で点$A$は$(0,0)$となる。点$A$を通り、$l$に垂直な直線は
$$Y=\dfrac{b}{a}X$$
となる。よって、交点$H$の座標を求めると
$$a(X+x_0)+b\left(\dfrac{b}{a}X+y_0\right)+c=0$$
$$X\left(a+\dfrac{b^2}{a}\right)=-c-by_0-ax_0$$
両辺を$a$倍すると、
$$X(a^2+b^2)=-a(c+by_0+ax_0)$$
$$X=\dfrac{-a(c+by_0+ax_0)}{a^2+b^2}$$
$$Y=\dfrac{-b(c+by_0+ax_0)}{a^2+b^2}$$
よって$AH$の長さは、
$$AH=\sqrt{\left(\dfrac{-a(c+by_0+ax_0)}{a^2+b^2}\right)^2+\left(\dfrac{-b(c+by_0+ax_0)}{a^2+b^2}\right)^2}$$
$$AH=\sqrt{\dfrac{a^2+b^2}{(a^2+b^2)^2}(c+by_0+ax_0)^2}$$
$$AH=\sqrt{\dfrac{1}{a^2+b^2}(c+by_0+ax_0)^2}$$
$$AH=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$
よって、座標をずらしても長さは変わらないから、
$$d=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$
となる。
ポイント
座標の位置がめんどくさいなら原点にずらせばいい
[2]$a=0$であるとき

距離$d$は以下のようになる。
$$d=\left|y_0-(-\dfrac{c}{b})\right|$$
$$=\left|y_0+\dfrac{c}{b}\right|$$
$$=\left|\dfrac{by_0+c}{b}\right|$$
$$=\left|\dfrac{by_0+c}{b}\right|$$
これは、点$A$から、直線と距離の公式に代入したものと同じになるため、$a=0$のときも成り立つ。
3. ベクトルを用いた証明


3.1. 成分・内積の計算を行う
$ax+by+c=0$の法線ベクトルは$\vec{n}=(a,b)$となる。
$\vec{AH}$は$\vec{n}$に平行であるから、実数$k$を用いて表すと、
$$\vec{AH}=k\vec{n}$$
となる。$H$の座標を$(x_1,y_1)$とすると、
$$\vec{OH}=(x_1,y_1)$$
となるため、
$$\vec{OH}-\vec{OA}=k\vec{n}$$
$$\Leftrightarrow \begin{pmatrix}x_1-x_0\\y_1-y_0 \end{pmatrix}=k\begin{pmatrix}a\\b \end{pmatrix}$$
両辺に$\begin{pmatrix}a\\b \end{pmatrix}$の内積をとると、
$$\Leftrightarrow \begin{pmatrix}x_1-x_0\\y_1-y_0 \end{pmatrix}\cdot\begin{pmatrix}a\\b \end{pmatrix}=k\begin{pmatrix}a\\b \end{pmatrix}\cdot\begin{pmatrix}a\\b \end{pmatrix}$$
$$a(x_1-x_0)+b(y_1-y_0)=k(a^2+b^2)$$
$$\therefore k=\dfrac{a(x_1-x_0)+b(y_1-y_0)}{a^2+b^2}$$
点Hは直線$l$上の点に存在するため、$ax_1+by_1+c=0$となり、
$$k=\dfrac{-ax_0-by_0-c}{a^2+b^2}$$
したがって、距離$d$は
$$d=|k\vec n|$$
$$d=\left|\dfrac{-ax_0-by_0-c}{a^2+b^2}\sqrt{a^2+b^2}\right|$$
$$d=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$
3.2. 直線の式に代入する
$$\begin{pmatrix}x_1-x_0\\y_1-y_0 \end{pmatrix}=k\begin{pmatrix}a\\b \end{pmatrix}$$
となることを先ほど示しましたが、これを変形します。
$$\begin{pmatrix}x_1\\y_1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}x_0+ka\\y_0+kb \end{pmatrix}$$
また、$ax_1+by_1+c=0$に以上の結果を代入すると、
$$a(x_0+ka)+b(y_0+kb)+c=0$$
$$k(a^2+b^2)=-ax_0-by_0-c$$
$$k=\dfrac{-ax_0-by_0-c}{a^2+b^2}$$
となり、先ほどと同じ値が得られた。先ほどの証明と同じことを行えば、点と直線の距離の公式が証明できる。