更新:2025/03/03

完全数pq、p²qを背景にした不定方程式

完全数とは、その約数の総和がちょうど2倍になる特別な整数です。例えば、最小の完全数である「6」は、約数が 1, 2, 3, 6 であり、その総和は $1+2+3+6=2 \times 6$ という関係を満たします。このような完全数が、特定の形の数式で表される場合、不定方程式を用いてどのように求めることができるのでしょうか?

今回のテーマは、「$pq$ の形」や「$p^2q$ の形」で表される完全数を求める という問題です。ここで、$p, q$ は異なる素数とします。このような形の完全数が存在する場合、どのような条件を満たすのでしょうか?また、それを不定方程式の形で解くには、どのような数学的手法が使えるのでしょうか?

それでは、まず $pq$ の形で表せる完全数 について、数式を整理しながら考えていきましょう!

1. 完全数を背景にした不定方程式の問題

$p,q$を異なる素数とする。

$(1)$ $pq$の形で表すことができる完全数を求めよ。
$(2)$ $p^2q$の形で表すことができる完全数を求めよ。
ただし$(2)$のときは、$p<q$が成り立っている。

2. 完全数の性質

完全数の性質

詳しくはこちらの記事で解説していますが、ざっくり表すと以上のような図になります。

完全数

はるか
はるか
完全数の話、興味深いね。不定方程式との関連もある。

3. $pq$の形で表すことができる完全数

(1)の解法を2通り示します。

3.1. 不定方程式を変形する

完全数とは、完全数の約数の総和が完全数の2倍になるという性質があるため、約数の総和は$(p+1)(q+1)$とあらわすことができることより、

$(p+1)(q+1)=2pq$

$p+q+pq+1=2pq$

$p+q-pq+1=0$

$p-1$の形を作ると、

$(p-1)+q(1-p)+2=0$

$(p-1)-q(p-1)+2=0$

となるため、

$(p-1)(1-q)=-2$

$\Leftrightarrow (p-1)(q-1)=2$

となる。完全数$pq$は対称的であるから、$p>q$と置いても一般性は失わないため、

$(p-1,q-1)=(2,1)$

$\therefore (p,q)=(3,2)$

となる。よって、求める完全数は$6と$なる。

3.2. 不等式で評価する

完全数とは、完全数の約数の総和が完全数の2倍になるという性質がある。したがって、$p$と$q$は異なる素数であるから、$pq$の約数は$p,q,1,pq$である。

よって、約数の総和が$2pq$に等しくなるため、

$p+q+pq+1=2pq$

$p$と$q$は異なる素数であり、

完全数$pq$は対称的であるから、$p>q$と置いても一般性は失わないため、

$q+1=pq-p$

$>q^2-q$

となる。

$q^2-2q-1<0$

2次不等式を解くと、

$(q-(1+\sqrt{2}))(q-(1-\sqrt{2}))<0$

となるため、$q>0$より、

$0 <q <1+\sqrt{2}$

となる。したがって、qの候補は$q=1,2$となるが、$q$は素数であるため、$q=1$は満たさない。

$q=2$のとき、

よって、$q+1=pq-p$に代入すると、

$3=2p-p$

$\therefore p=3$

$pq$の形で表すことができる完全数は$3\cdot2=6$である。

はるか
はるか
不等式を使う方法でも、同じ結果になる。

ふゅか
ふゅか
二つの方法で解くことで、理解が深まるわね♪ 次は$p^2q$の形で表す完全数を見てみましょう。

4. $p^2q$の形で表すことができる完全数

$(2)$の解法を2通り示します。

4.1. 互いに素であることを利用する

完全数とは、完全数の約数の総和が完全数の2倍になるという性質があるため、$p^2q$の約数の総和は$(p+p^2+1)(q+1)$とあらわすことができることより、

$(p+p^2+1)(q+1)=2p^2q$

$p$を法とする合同式を用いると、

$p^2+p+1\equiv 1 \pmod{p}$

となるため、$p$と$p^2+p+1$は互いに素である。

したがって、$q+1$が$p$の倍数であることがわかるため、任意の自然数$a$を用いて、

$q+1=ap^2$

とあらわすことができる。$q+1=ap^2$を代入すると、

$(p+p^2+1)ap^2=2p^2(ap^2-1)$

$(p+p^2+1)a=2(ap^2-1)$

$(-p^2+p+1)a=-2$

$\therefore (p^2-p-1)a=2$

よって、解の候補を考えると、$a>0$であるから、

$(p^2-p-1,a)=(1,2),(2,1)$

となる。
$[1]$$a=2$のとき、

$p^2-p-1=1$

$p^2-p-2=0$

$(p-2)(p+1)=0$

$p=2,-1$となるが、$p>0$より、$p=2$となる。$p=2$のときの、qの値を求めると、

$q=ap^2-1=2\cdot2^2-1=7$

となる。完全数は$2^2\cdot 7=28$であることがわかる。

$[2]$$a=1$のとき、

$p^2-p-1=2$

$p^2-p-3=0$

解の公式を用いると、

$p=\dfrac{1\pm \sqrt{1+12}}{2}$

$p=\dfrac{1\pm \sqrt{13}}{2}$

となるため、$p$は自然数であるため、条件を満たさない。

$[1][2]$より、完全数pqは$28$である。

4.2. 分数が整数になるように不等式で評価

完全数とは、完全数の約数の総和が完全数の2倍になるという性質があるため、$p^2q$の約数の総和は$(p+p^2+1)(q+1)$とあらわすことができることより、

$(p+p^2+1)(q+1)=2p^2q$

$q(p+p^2+1)+(p+p^2+1)=2p^2q$

$q(-p^2+p+1)=-(p+p^2+1)$

$q(p^2-p-1)=(p^2+p+1)$

$[1]$ $p^2-p-1=0$のとき、

$p=\dfrac{1\pm\sqrt{1+4}}{2}$

$\therefore p=\dfrac{1\pm\sqrt{5}}{2}$

よって、pが自然数である条件を満たさない。

$[2]$ $p^2-p-1\neq0$のとき、

両辺を$p^2-p-1$で割ると、

$q=\dfrac{p^2+p+1}{p^2-p-1}$

$=1+\dfrac{2p+2}{p^2-p-1}$

$q$は素数であり自然数であることから、$\dfrac{2p+2}{p^2-p-1}$は自然数である。よって、分子が分母よりも大きくなる必要があるため、

$2p+2>p^2-p-1$

$p^2-3p-3<0$

$\left(p-\dfrac{3+\sqrt{21}}{2}\right)\left(p-\dfrac{3-\sqrt{21}}{2}\right)<0$

$4<\sqrt{21}<5$であることから、$\dfrac{3+\sqrt{21}}{2}<\dfrac{8}{2}=4$となる。

したがって、$p$の候補は$p$が素数であることから

$p=2,3$となる。

$[a]$$p=2$のとき、

$q=1+\dfrac{2p+2}{p^2-p-1}$

$=1+\dfrac{6}{1}$

$=7$

したがって、完全数は$2^2\cdot7=28$となる。

$[b]$$p=3$のとき、

$q=1+\dfrac{2p+2}{p^2-p-1}$

$=1+\dfrac{8}{5}$

となるため、自然数である条件を満たさない。

$[1][2]$より、完全数は$28$であることがわかる。

PR