更新:2025/03/09

ガンマ分布の意味と期待値と分散の導出について

はるか
はるか
ガンマ分布って知ってる?
ふゅか
ふゅか
待ち時間を表す分布だよね?平均10年で起きる現象が3回起きるまでにかかる時間、とか。

1. ガンマ分布とは?

「10年に1回起こる現象が、3回発生するまでにかかる時間はどれくらい?」
「病気の発生や機械の故障、自然災害のように、ある間隔で起こる出来事が何回か発生するまでの時間を知りたいことってあるよね。」

このような 待ち時間の分布 を扱うのが ガンマ分布 です。
簡単に言えば、「ある事象が何回か発生するまでにどれくらいの時間がかかるか?」を確率的に表す数学モデルです。

たとえば、10年に1回 の頻度で発生する現象が 3回 起こるまでにかかる時間は、ガンマ分布 に従います。
この場合、ガンマ分布の期待値(平均値)は 10年 × 3回 = 30年 になります。

では、具体的にガンマ分布とはどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。

1.1. 確率密度関数

ガンマ分布の確率密度関数(PDF)は、以下の式で表されます。

\[f(x) = \frac{x^{\,n-1} e^{-\frac{x}{\mu}}}{\mu^{\,n}\Gamma(n)} \quad (x > 0,\; n>0,\; \mu>0)\]

ガンマ関数 \( \Gamma(n) \) は、次のような積分で定義される数学的な関数です。

\[\Gamma(n)=\int_0^{\infty} x^{\,n-1} e^{-x}\,dx\]

となります(例:\(\Gamma(3)=2!=2\)、\(\Gamma(4)=3!=6\) など)。

ここで、各パラメータの意味は次の通りです。

  • \( x \):変数(時間などを表す)
  • \( n \): 事象が起こるまでの回数(形状パラメータ)
  • \( \mu \): 一回の事象が起こるまでの平均間隔(尺度パラメータ)
  • \( \Gamma(n) \): ガンマ関数(Gamma関数)

ガンマ分布

2. ガンマ分布の期待値と分散

ガンマ分布の期待値と分散は次のシンプルな式で表されます。

  • 期待値:\( n \mu \)
  • 分散:\( n \mu^2 \)

これらの公式は、平均μの指数分布(1回の事象が起きるまでの待ち時間を表す分布)に従う独立な確率変数をn個足し合わせると、パラメータn, μのガンマ分布になる、という性質から導かれます。

ふゅか
ふゅか
どの辺りをしっかり見ておけばいい?

はるか
はるか
回数nの関係。平均と分散も単純にn倍だから。

具体例で理解するとわかりやすいでしょう。たとえば平均10年に一度起きる現象が5回起きるまでの時間は、期待値が50年(10年 × 5回)で、分散は500年²(5回 × 10年²)となります。

2.1. ガンマ分布の期待値の導出

ガンマ分布の期待値は定義から次のように書けます。

\[ E[X]=\int_0^{\infty} x f(x)\,dx \]

上の式にPDFを代入すると、

\[ E[X]=\int_0^{\infty} x \cdot \frac{x^{\,n-1} e^{-\frac{x}{\mu}}}{\mu^{\,n}\Gamma(n)}\,dx =\frac{1}{\mu^{\,n}\Gamma(n)}\int_0^{\infty} x^n e^{-\frac{x}{\mu}}\,dx \]

ここで積分を計算しやすくするために、置換積分を行います。

変数変換を次のように設定します。

\[ t=\frac{x}{\mu}\quad \Longrightarrow\quad x=\mu t,\quad dx=\mu dt \]

この置換により積分は、

\[ E[X]=\frac{1}{\mu^{\,n}\Gamma(n)}\int_0^{\infty}(\mu t)^n e^{-t}\mu\,dt =\frac{\mu^{\,n+1}}{\mu^{\,n}\Gamma(n)}\int_0^{\infty}t^{\,n} e^{-t}\,dt =\frac{\mu}{\Gamma(n)}\int_0^{\infty}t^{\,n} e^{-t}\,dt \]

この積分はガンマ関数の定義そのものです。

\[ \int_0^{\infty}t^{\,n} e^{-t}\,dt=\Gamma(n+1) \]

ガンマ関数の性質\(\Gamma(n+1)=n\Gamma(n)\)を利用すると、

\[ E[X]=\frac{\mu}{\Gamma(n)}\Gamma(n+1)=\frac{\mu}{\Gamma(n)}\cdot n\Gamma(n)=n\mu \]

2.2. ガンマ分布の分散の導出

次に、分散を導出します。分散は定義から以下のようになります。

\[ \text{Var}[X]=E[X^2]-(E[X])^2 \]

まず、\(E[X^2]\)を計算します。

\[ E[X^2]=\int_0^{\infty} x^2 f(x)\,dx =\frac{1}{\mu^{\,n}\Gamma(n)}\int_0^{\infty} x^{\,n+1} e^{-\frac{x}{\mu}}\,dx \]

再び先ほどと同じ置換(\(t=x/\mu\))を使うと、

\[ E[X^2]=\frac{1}{\mu^{\,n}\Gamma(n)}\int_0^{\infty}(\mu t)^{\,n+1} e^{-t}\mu\,dt =\frac{\mu^{\,n+2}}{\mu^{\,n}\Gamma(n)}\int_0^{\infty}t^{\,n+1} e^{-t}\,dt =\frac{\mu^2}{\Gamma(n)}\Gamma(n+2) \]

ここで、再びガンマ関数の性質を利用します。

$$ \Gamma(n+2)=(n+1)\Gamma(n+1)= (n+1)n\Gamma(n) $$

したがって、

\[ E[X^2]=\frac{\mu^2}{\Gamma(n)}\cdot (n+1)n\Gamma(n)=n(n+1)\mu^2 \]

これで\(E[X^2]\)が求まりました。

次に分散を計算すると、

\[ \text{Var}[X]=E[X^2]-(E[X])^2 =n(n+1)\mu^2-(n\mu)^2 =n(n+1)\mu^2-n^2\mu^2 =n\mu^2 \]

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