3. 幾何分布の性質
3.1. 期待値(Mean)
幾何分布の期待値は次のようになります。
E[X]=p1
期待値 E[X] は定義より
E[X]=k=1∑∞k⋅P(X=k)=k=1∑∞kp(1−p)k−1
ここで,級数の形を整理します。まず,p は定数なので外に出すと,
E[X]=pk=1∑∞k(1−p)k−1
この無限和の処理には,次の無限等比級数の公式を使います:
k=0∑∞xk=1−x1(∣x∣<1),
この級数を微分すると次のような級数が得られます。
k=1∑∞kxk−1=(1−x)21(∣x∣<1)
ここで,x=1−p とおけば ∣1−p∣<1(ただし 0<p<1 が前提)なので,後者の式より
k=1∑∞k(1−p)k−1=(1−(1−p))21=p21
従って,
E[X]=p⋅p21=p1
3.2. 分散(Variance)
幾何分布の分散は次のように表されます。
Var(X)=p21−p
成功確率が小さいほど、試行回数の変動が大きくなることを意味します。
分散は定義より
Var(X)=E[X2]−(E[X])2
したがって,E[X2] を求める必要があります。まずは
E[X2]=k=1∑∞k2⋅P(X=k)=k=1∑∞k2p(1−p)k−1
これを直接計算してもよいですが,下記のように 「E[X(X−1)] を先に計算する」 と計算が楽になります。
E[X(X−1)]=k=1∑∞k(k−1)p(1−p)k−1
ところが,k(k−1) は k=1 のとき 0 ですから,実質的に k≥2 で考えられます。そこで次のような等比級数の拡張形を使います。
期待値の時と同様に、微分して得られる公式:
k=2∑∞k(k−1)xk−2=(1−x)32(∣x∣<1)
これを x=1−p とすると,
k=2∑∞k(k−1)(1−p)k−2=(1−(1−p))32=p32
一方,我々が欲しいのは k(k−1)(1−p)k−1 なので,ひとつ次元(指数)がずれています。そこで
k(k−1)(1−p)k−1=k(k−1)(1−p)k−2⋅(1−p)
よって
k=2∑∞k(k−1)(1−p)k−1=(1−p)k=2∑∞k(k−1)(1−p)k−2
上の結果を使うと
k=2∑∞k(k−1)(1−p)k−1=(1−p)⋅p32=p32(1−p)
これに k=1 の項(値は 0)も加えて問題ないので,
k=1∑∞k(k−1)(1−p)k−1=p32(1−p)
最後に p を掛ければ
E[X(X−1)]=p⋅p32(1−p)=p22(1−p)
E[X2] の導出を行うと、
E[X2]=E[X(X−1)]+E[X]=p22(1−p)+p1
両方を足し合わせると
E[X2]=p22(1−p)+p1=p22(1−p)+p1⋅pp=p22(1−p)+p=p22−2p+p=p22−p
分散を求めると
Var(X)=E[X2]−(E[X])2=p22−p−(p1)2=p22−p−p21=p22−p−1=p21−p