二乗の差と不等式の証明の意味と例題について



1. 二乗を利用した不等式の証明
不等式を証明する際、二乗を利用すると証明が簡潔になり、見通しが良くなる場合があります。特に、ルートや絶対値が含まれている不等式では、二乗を活用することで計算が楽になります。
$$A\geqq B$$
この不等式が成り立つことを証明するために、次の式を考えます。
\[ A^2 – B^2 \]
この式の結果が 0 以上である場合、\(A \geqq B\) が成り立ちます。
1.1. なぜこの方法が成り立つのか
まず、\(A\) と \(B\) は 0以上の値であることを仮定します。この条件がかなり重要です。次に、不等式 \(A \geqq B\) を平方を使った式に変換します。具体的には、以下のように書き直します。
\[ A^2 – B^2 \]
もし、この計算結果が
\[ A^2 – B^2 \geq 0 \]
であるとき、この不等式を差の形に因数分解すると
\[ A^2 – B^2 = (A + B)(A – B)\geqq 0 \]
\(A\) と \(B\) はともに 0 以上であると仮定しているため、\(A + B \geqq 0\) が成り立ちます。
したがって、積の形の不等式の不等号から、$A – B \geqq 0$が成り立ちます。結果として \(A \geq B\) となります。

2. 不等式の証明の例題
2.1. 例題1:ルートを含む不等式
$$\sqrt{x}+\sqrt{y} > \sqrt{x+y}$$
二乗の差を計算すると
$$\begin{align*} (\sqrt{x} + \sqrt{y})^2 – (\sqrt{x + y})^2 &= x + y + 2\sqrt{xy} – (x + y) \\ &= 2\sqrt{xy} \\ &> 0 \end{align*}$$
$\sqrt{x}+\sqrt{y}$と$\sqrt{x+y}$も正の実数であるので、
\[ \sqrt{x} + \sqrt{y} > \sqrt{x + y} \]
が成り立つことが証明されました。
2.2. 例題2:絶対値を含む不等式
$$|x|+\sqrt{y} > \sqrt{x^2+y}$$
二乗の差を計算すると
$$\begin{align*} \left( |x| + \sqrt{y} \right)^2-\left( \sqrt{x^2 + y} \right)^2 \\ &= x^2 + 2|x|\sqrt{y} + y- x^2 – y \\ &=2|x|\sqrt{y}> 0 \\ \end{align*}$$
$|x|+\sqrt{y}$と$ \sqrt{x^2+y}$は正の実数であるので、
\[ |x| + \sqrt{y} > \sqrt{x^2 + y} \]
