恒等式と方程式の違い・具体例・例題について



1. 恒等式とは
恒等式(こうとうしき)とは、どんな値を代入しても常に成り立つ等式のことを指します。恒等式は、特定の条件下でのみ成り立つ方程式とは異なり、あらゆる場合において成り立つことが特徴です。
1.1. 恒等式の例
- \( a + b = b + a \)
- \( (a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2 \)
- $a^{4} + 4b^{4} = (a^2 + 2ab + 2b^2)(a^2 – 2ab + 2b^2)$:ソフィー・ジェルマンの恒等式
このような式は、どんな値 \( a \) や \( b \) を代入しても必ず成り立つため、恒等式と呼ばれます。
1=1はすべての変数に対する恒等式といえる。
1.2. 方程式との違い
恒等式は常に成り立つのに対して、方程式は特定の条件(例えば、ある特定の値)でのみ成り立ちます。例えば、方程式 \( x + 2 = 5 \) は \( x = 3 \) のときにのみ成り立ちますが、恒等式はすべての変数の値に対して成り立ちます。




2. 恒等式の例題
2.1. 例題 1: 数値代入法
\[2 x^2 + (a + 1)x + b = cx^2 + (3 – c)x + 5 \]
数値代入法を使用して定数 \(a\), \(b\), \(c\) を求めます。まず、任意の値を \(x\) に代入して方程式を解いていきます。
ステップ 1: \(x = 0\) を代入
両辺に \(x = 0\) を代入します。
\[ 2(0)^2 + (a + 1)(0) + b = c(0)^2 + (3 – c)(0) + 5 \]
よって、定数項だけが残り、以下の結果が得られます。
\[ b = 5 \]
ステップ 2: \(x = 1\) を代入
次に、両辺に \(x = 1\) を代入します。
\[ 2(1)^2 + (a + 1)(1) + 5 = c(1)^2 + (3 – c)(1) + 5 \]
これを計算すると、
\[ 2 + a + 1 + 5 = c + (3 – c) + 5 \]
よって、
\[ a + 8 = 8 \]
これから、\(a = 0\) が得られます。
ステップ 3: \(x = -1\) を代入
最後に、両辺に \(x = -1\) を代入します。
\[ 2(-1)^2 + (a + 1)(-1) + 5 = c(-1)^2 + (3 – c)(-1) + 5 \]
これを計算すると、
\[ 2 – (a + 1) + 5 = c – (3 – c) + 5 \]
\[ 7 – a – 1 = c – 3 + c + 5 \]
\(a = 0\) を代入してさらに整理すると、
\[ 6 = 2c + 2 \]
よって、
\[ 2c = 4 \quad \Rightarrow \quad c = 2 \]
\(a\), \(b\), \(c\) は次のようになります。
\[ a = 0, \quad b = 5, \quad c = 2 \]
2.2. 例題 2: 係数比較法
\[ (2x + 3)(x^2 + ax + b) = cx^3 + 6x^2 + \dfrac{45}{2}x + 27 \]
左辺を展開します。
\[\begin{align*} (2x + 3)(x^2 + ax + b) &= 2x^3 + 2ax^2 + 2bx + 3x^2 + 3ax + 3b \\ &= 2x^3 + (2a + 3)x^2 + (2b + 3a)x + 3b \end{align*}\]
恒等式は次のようになる。
$$2x^3 + (2a + 3)x^2 + (2b + 3a)x + 3b = cx^3 + 6x^2 + \dfrac{45}{2}x + 27 $$
各項の係数を比較します。
- \(x^3\) の係数: \(2 = c\) より、\(c = 2\)。
- \(x^2\) の係数: \(2a + 3 = 6\) より、\(2a = 3\)、したがって \(a = \frac{3}{2}\)。
- \(x\) の係数: \(2b + 3a = 11\) より、\(2b + 3 \times \frac{3}{2} = \dfrac{45}{2}\)。すなわち、\[ 2b =\dfrac{45}{2} – \frac{9}{2} = 18 \] よって \(b = 9\)。
- 定数項: \(3b = 27 \) より、\(b = 9\)。
したがって、\(a = \frac{3}{2}\), \(b = 9\), \(c = 2\) です。