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更新:2025/01/25

距離空間と距離関数・定義・具体例・三角不等式について

はるか
はるか
距離空間って何?
ふゅか
ふゅか
距離関数の集合のことね!感覚的だけでなく抽象的な距離も扱えるようになっているわ!

1. 距離空間の定義

距離空間は、集合 \( X \) と、次の条件を満たす関数 \( d: X \times X \rightarrow \mathbb{R} \) から成ります。この関数 \( d \) を距離関数と呼びます。距離関数 \( d \) は、任意の \( x, y, z \in X \) について、次の3つの性質を満たします。$d(x, y) \geq 0$とする。

  1. $d(x, y) = 0 \iff x = y$
  2. $d(x, y) = d(y, x)$
  3. $d(x, z) \leq d(x, y) + d(y, z)$

1.1. 距離空間の公理の意味

ふゅか
ふゅか
公理の意味を一つ一つ解釈してみよう!
  1. 非退化性: $d(x, y) = 0 \iff x = y$
    • 距離は常に0以上であり、2点が同じ点である場合にのみ距離が0になります。
  2. 対称性: \( d(x, y) = d(y, x) \)
    • これは、点 \( x \) から点 \( y \) までの距離が、点 \( y \) から点 \( x \) までの距離と等しいことを意味します。
  3. 三角不等式: \( d(x, z) \leq d(x, y) + d(y, z) \)
    • これは、点 \( x \) から点 \( z \) への距離が、途中の点 \( y \) を経由する距離の和以上であることを意味します。

2. 距離空間の具体例

ふゅか
ふゅか
距離空間の具体例についてみてみよう!

2.1. ユークリッド距離

\( \mathbb{R}^n \) において、2つの点 \( x = (x_1, x_2, \ldots, x_n) \) と \( y = (y_1, y_2, \ldots, y_n) \) の間のユークリッド距離 $$d(x, y) = \sqrt{\sum_{i=1}^{n} (x_i - y_i)^2}$$ を定義します。

ふゅか
ふゅか
1,2はほぼ明らかであるので三角不等式が成り立つことを見てみよう!

点 \( x = (x_1, \ldots, x_n) \)、\( y = (y_1, \ldots, y_n) \)、および \( z = (z_1, \ldots, z_n) \) に対して、以下のベクトルを定義します。

\[ a_i = z_i - x_i, \quad b_i = y_i - z_i \]

次の関係が成り立ちます。

\[ a_i + b_i = (z_i - x_i) + (y_i - z_i) = y_i - x_i \]

これを利用して、\( d(x, y) \) の二乗は次のように書き換えることができます。

\[ (d(x, y))^2 = \sum_{i=1}^n (y_i - x_i)^2 = \sum_{i=1}^n (a_i + b_i)^2 \]

\[ = \sum_{i=1}^n a_i^2 + 2\sum_{i=1}^n a_i b_i + \sum_{i=1}^n b_i^2 \]

ここで、\( \sum_{i=1}^n a_i^2 \) は \( d(x, z) \) の二乗、\( \sum_{i=1}^n b_i^2 \) は \( d(z, y) \) の二乗、にそれぞれ対応します。したがって、この式は次のようになります。

\[ = (d(x, z))^2 + 2\sum_{i=1}^n a_i b_i + (d(z, y))^2 \]

ここで、コーシー・シュワルツの不等式 より、 次の不等式が得られます。

\[ \sum_{i=1}^n a_i b_i \leq \sqrt{\sum_{i=1}^n a_i^2} \cdot \sqrt{\sum_{i=1}^n b_i^2} = 2d(x, z) \cdot d(z, y) \]

したがって、次のように書き直せます。

\[ (d(x, y))^2= (d(x, z))^2 + 2\sum_{i=1}^n a_i b_i + (d(z, y))^2 \leq (d(x, z))^2 + 2d(x, z) \cdot d(z, y) + (d(z, y))^2 \]

\[ (d(x, y))^2 \leq \left( d(x, z) + d(z, y) \right)^2 \]

これで、$d(x, y)\geq 0,\quad d(x, z) + d(z, y)\geq 0$より、

\[ d(x, y) \leq d(x, z) + d(z, y) \]

が得られます。

ユークリッド距離 \( d\) が三角不等式を満たすことが証明されました。

はるか
はるか
よくあるやつだ。
ふゅか
ふゅか
そうね。\( \mathbb{R}^2 \)とか\( \mathbb{R}^3 \)とかは中学校でやる距離だね!

2.2. マンハッタン距離

\( \mathbb{R}^n \) において、2つの点 \( x = (x_1, x_2, \ldots, x_n) \) と \( y = (y_1, y_2, \ldots, y_n) \) の間のマンハッタン距離 $$ d(x, y) = \sum_{i=1}^n |x_i - y_i| $$ を定義します。
任意の \( x, y, z \in \mathbb{R}^n \) について、マンハッタン距離は次のようになります

\[ d(x, z) = \sum_{i=1}^n |x_i - z_i| \]

\[ d(x, y) + d(y, z) = \sum_{i=1}^n |x_i - y_i| + \sum_{i=1}^n |y_i - z_i| \]

$d(x, z) $から不等式を導きます。

\[ d(x, z) = \sum_{i=1}^n |x_i - z_i| \]

$$= \sum_{i=1}^n |x_i-y_i - (z_i-y_i)|$$

$$\leq \sum_{i=1}^n |x_i-y_i| + |y_i-z_i|$$

$$= \sum_{i=1}^n |x_i-y_i| + \sum_{i=1}^n|y_i-z_i|$$

$$= d(x, y) + d(y, z)$$

したがって、

\[ d(x, z) \leq d(x, y) + d(y, z) \]

2.3. 離散距離

離散距離 \( d \) は、次のように定義されます。

\[ d(x, y) = \begin{cases} 0 & ( x = y )\\ 1 & ( x \neq y ) \end{cases} \]

[1] \( x = y = z \) の場合

この場合、すべての点が同じため、次が成り立ちます。

\[ d(x, z) = 0, \quad d(x, y) = 0, \quad d(y, z) = 0 \]

したがって、

\[ d(x, z) = 0 \leq 0 + 0 = d(x, y) + d(y, z) \]

[2]\( x = y \neq z \) または \( y = z \neq x \) または \( x = z \neq y \) の場合

この場合、いずれかの2点が等しく、1点が異なるので、例えば \( x = y \) で \( z \) が異なるとします。このとき、

\[ d(x, z) = 1, \quad d(x, y) = 0, \quad d(y, z) = 1 \]

したがって、

\[ d(x, z) = 1 \leq 0 + 1 = d(x, y) + d(y, z) \]

同様に、他の2点が等しい場合でも同じ不等式が成り立ちます。

[3] \( x \neq y \neq z \) で \( x \neq z \) の場合

この場合、すべての点が異なり、次が成り立ちます。

\[ d(x, z) = 1, \quad d(x, y) = 1, \quad d(y, z) = 1 \]

したがって、

\[ d(x, z) = 1 \leq 1 + 1 = d(x, y) + d(y, z) \]

以上より、離散距離 \( d \) が三角不等式を満たしていることを確認できました。

はるか
はるか
あんまり、感覚的に距離を感じないな。
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