更新:2024/09/14

計量線形空間の定義・性質・内積の計算・例題について

ふゅか
ふゅか
計量線形空間って何?ちょっと難しい響きね。
はるか
はるか
うん、線形空間に内積が定義されてるもの。

1. 計量線形空間とは

計量線形空間(内積空間、計量ベクトル空間)は、線形空間 \(V\) に内積と呼ばれる操作が定義されている空間です。内積は、任意のベクトル \(u, v \in V\) に対して実数を割り当てる二項演算であり、通常 \(\langle u, v \rangle\) の形で表されます。

内積は以下の性質を満たします。内積の演算\(\langle \cdot ,\cdot \rangle : V \times V \rightarrow \mathbb{C} \) とします。

正定値性: \(\langle v, v \rangle \geq 0\) であり、\(\langle v, v \rangle = 0 \Leftrightarrow v = 0\) 。

線形性: 任意の \(u, v, w \in V\) とスカラー \(a ,b\in \mathbb{C}\) に対して、

\[\langle au +b v, w \rangle = a\langle u, w \rangle +b \langle v, w \rangle\]

共役対称性: \(\langle u, v \rangle = \overline{\langle v, u \rangle} \)

複素ベクトル空間を利用しましたが、実数の場合は次のように定義されます。

\(\langle \cdot ,\cdot \rangle : V \times V \rightarrow \mathbb{R} \) として、

正定値性: \(\langle v, v \rangle \geq 0\) であり、\(\langle v, v \rangle = 0 \Leftrightarrow v = 0\) 。

線形性: 任意の \(u, v, w \in V\) とスカラー \(a,b\in \mathbb{R}\) に対して、

\[\langle au + bv, w \rangle =a \langle u, w \rangle + b\langle v, w \rangle\]

対称性: \(\langle u, v \rangle = \langle v, u \rangle \)

2. 計量線形空間の性質

2.1. 内積の計算

ベクトル \(\mathbf{u} = (u_1, u_2, \ldots, u_n)\) と \(\mathbf{v} = (v_1, v_2, \ldots, v_n)\) の内積は次のように計算することができます。

\[ \langle \mathbf{u}, \mathbf{v} \rangle = u_1 \overline{v_1} + u_2 \overline{v_2} + \cdots + u_n \overline{v_n} = \sum_{i=1}^{n} u_i \overline{v_i} =u^\top \overline {v} \]

実数ベクトルの場合は複素共役がなくなり次のようなります。

\[ \langle \mathbf{u}, \mathbf{v} \rangle = u_1 v_1+ u_2 {v_2} + \cdots + u_n {v_n} = \sum_{i=1}^{n} u_i {v_i} =u^\top v \]

2.1.1. 2次元ベクトルの内積

2次元ベクトル \(\mathbf{u} = (u_1, u_2)\) と \(\mathbf{v} = (v_1, v_2)\) の内積は次のように計算されます。

\[ \langle \mathbf{u}, \mathbf{v} \rangle = u_1 v_1 + u_2 v_2 \]

2.1.2. 3次元ベクトルの内積

3次元ベクトル \(\mathbf{u} = (u_1, u_2, u_3)\) と \(\mathbf{v} = (v_1, v_2, v_3)\) の内積は次のように計算されます。

\[ \langle \mathbf{u}, \mathbf{v} \rangle = u_1 v_1 + u_2 v_2 + u_3 v_3 \]

2.2. ノルム

内積から導かれるノルム \( \|v\| \) は、次のように定義されます。

\[ \|v\| = \sqrt{\langle v, v \rangle} \]

このノルムはベクトルの「長さ」を表します。

2.3. 距離

内積空間では、任意の \(u, v \in V\) に対して、ベクトル間の距離は次のように定義されます。

\[ d(u, v) = \|u – v\| \]

この距離関数 \(d(u, v)\) は三角不等式を満たします。

2.4. 角度

内積を使って、ベクトル間の角度も定義できます。ベクトル \(u\) と \(v\) の成す角度 \(\theta\) は次のように定義されます。

\[ \cos\theta = \frac{\langle u, v \rangle}{\|u\|  \|v\|} \]

はるか
はるか
角度はどうやって計算する?
ふゅか
ふゅか
内積とノルムを使ってコサインθを求めるのよ!「角度」のセクションを見てみましょう!

3. 内積の例題

3.1. 例題1:関数空間

連続関数の集合 \( [0,1] \) を複素数上のベクトル空間とします。任意の \( f, g  \) に対して、内積を以下のように定義します。

\[ \langle f, g \rangle = \int_0^1 f(x) \overline{g(x)} \, dx \]

fとgが内積であることを示しなさい。

はるか
はるか
実は関数の積の積分も内積。

3.1.1. 共役対称性

\[ \begin{align*} \langle f, g \rangle &= \int_0^1 f(x) \overline{g(x)} \, dx \\ \overline{\langle g, f \rangle} &= \overline{\int_0^1 g(x) \overline{f(x)} \, dx} = \int_0^1 \overline{g(x)} f(x) \, dx \end{align*} \]

したがって、

\[ \langle f, g \rangle = \overline{\langle g, f \rangle} \]

3.1.2. 線形性

任意の \( a, b \in \mathbb{C} \) と \( f_1, f_2 \in C[0,1] \) に対して、

\[ \begin{align*} \langle a f_1 + b f_2, g \rangle &= \int_0^1 \left( a f_1(x) + b f_2(x) \right) \overline{g(x)} \, dx \\ &= a \int_0^1 f_1(x) \overline{g(x)} \, dx + b \int_0^1 f_2(x) \overline{g(x)} \, dx \\ &= a \langle f_1, g \rangle + b \langle f_2, g \rangle \end{align*} \]

3.1.3. 正定値性

\[ \langle f, f \rangle = \int_0^1 f(x) \overline{f(x)} \, dx = \int_0^1 |f(x)|^2 \, dx \geq 0 \]

もし \(\langle f, f \rangle = 0\) ならば、

\[ \int_0^1 |f(x)|^2 \, dx = 0 \]

となります。\( |f(x)|^2 \geq 0 \) であり、積分が0であるためには \( |f(x)|^2 = 0 \) が区間 \([0,1]\) の全ての \( x \) で成り立つ必要があります。したがって、

\[ f(x) = 0 \quad (\forall x \in [0,1]) \]

以上より、定義された積分は内積の3つの公理を満たすため、これは内積になります。

3.2. 例題2:実数ベクトルの内積

ベクトル \(\mathbf{a}\) と \(\mathbf{b}\) の内積を計算し、\(\cos\theta\) を求めましょう。
  • ベクトル \(\mathbf{a}\) の成分: \( \mathbf{a} = (3, 4) \)
  • ベクトル \(\mathbf{b}\) の成分: \( \mathbf{b} = (2, 1) \)

内積 \(\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}\) は以下のように計算されます。

\[ \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = a_1 b_1 + a_2b_2 \]

\[ \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = 3 \cdot 2 + 4 \cdot 1 = 6 + 4 = 10 \]

ベクトル \(\mathbf{a}\) と \(\mathbf{b}\) の大きさをそれぞれ計算します。

\[ |\mathbf{a}| = \sqrt{3^2 + 4^2} = \sqrt{9 + 16} = \sqrt{25} = 5 \]

\[ |\mathbf{b}| = \sqrt{2^2 + 1^2} = \sqrt{4 + 1} = \sqrt{5} \]

内積とベクトルの大きさを使って、2つのベクトルの間の角度 \(\theta\) の余弦を求めます。

\[ \cos\theta = \frac{\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}}{|\mathbf{a}| |\mathbf{b}|} \] \[ \cos\theta = \frac{10}{5 \times \sqrt{5}} = \frac{10}{5\sqrt{5}} = \frac{2}{\sqrt{5}} = \frac{2\sqrt{5}}{5} \]

3.3. 例題3:複素ベクトルの内積

複素ベクトル \(\mathbf{u}\) と \(\mathbf{v}\) の内積$\mathbf{u}\cdot \mathbf{v}$を計算しましょう。
  • 複素ベクトル \(\mathbf{u} = (3 + 2i, 1 – i)\)
  • 複素ベクトル \(\mathbf{v} = (1 + i, -2 + 2i)\)

複素ベクトルの内積は、\(\mathbf{u} \cdot \mathbf{v}\) のように次のように計算します。ここで、ベクトルの第2成分以降は共役複素数を取ります。

\[ \mathbf{u} \cdot \mathbf{v} = u_1 \overline{v_1} + u_2 \overline{v_2} \]

まず、各成分の共役を取ります。

\[ \overline{v_1} = \overline{(1 + i)} = 1 – i \] \[ \overline{v_2} = \overline{(-2 + 2i)} = -2 – 2i \]

それぞれの積を計算します。

\[ u_1 \overline{v_1} = (3 + 2i)(1 – i) = 3 – 3i + 2i – 2i^2 \]

\[ = 3 – i + 2 = 3 – i + 2 = 5 – i \]

\[ u_2 \overline{v_2} = (1 – i)(-2 – 2i) = -2 – 2i + 2i + 2i^2 \]

\[ = -2 – 2 = -4\]

よって、内積は \[ \mathbf{u} \cdot \mathbf{v} = (5 – i) +(-4) = 1 – i \]

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