更新:2024/09/16

直交系、正規直交系、正規直交基底の具体例・性質について

ふゅか
ふゅか
今日は直交系について話そうよ!
はるか
はるか
直交系はベクトルや関数の集合で、互いに直交しているんだ。内積が0になるとき直交と言える。

1. 直交系

直交系とは、ベクトルまたは関数が互いに直交している集合のことを指します。直交性とは、2つのベクトルや関数の内積(積分)が0であることを意味します。具体的には、ベクトル ui u_i uj u_j が直交するとは次の条件を満たすときです。

ui,uj=0(ij) \langle u_i, u_j \rangle = 0 \quad (i \neq j)

関数の場合、ある区間 [a,b][a, b] 上で次の積分が0であるとき、関数 fi f_i fj f_j は直交しています。

abfi(x)fj(x)dx=0(ij) \int_a^b f_i(x) f_j(x) \, dx = 0 \quad (i \neq j)

直交系は正規化されている必要はなく、つまり各ベクトルや関数のノルム(長さ)は1でなくても構いません。

2. 正規直交系

正規直交系は直交系の中でも、各ベクトルや関数が正規化されている(ノルムが1である)ものを指します。つまり、ベクトル ui u_i について以下の2つの条件を満たします。
  1. ui,uj=0(ij) \langle u_i, u_j \rangle = 0 \quad (i \neq j) (直交性)
  2. ui,ui=1(i) \langle u_i, u_i \rangle = 1 \quad (\forall i) (正規化)

また、ui,uj\langle u_i, u_j \rangleクロネッカーのデルタδij\delta_{ij}で表されます。

ui,uj=δij\langle u_i, u_j \rangle=\delta_{ij}

関数の場合も同様で、ある区間 [a,b][a, b] 上で次の2つの条件を満たします。

  1. abfi(x)fj(x)dx=0(ij) \int_a^b f_i(x) f_j(x) \, dx = 0 \quad (i \neq j) (直交性)
  2. abfi(x)2dx=1(i) \int_a^b f_i(x)^2 \, dx = 1 \quad (\forall i) (正規化)

正規直交系は、直交性に加えて、各要素のノルムが1であるため、計算や解析において扱いやすくなります。

はるか
はるか
正規直交系。これは直交していて、かつノルムが1のものを指す。
ふゅか
ふゅか
つまり、直交性に加えて各ベクトルが正規化されているってことだね!

3. 正規直交基底(完全正規直交系)

ベクトル空間 V V における正規直交基底 {u1,u2,,un}\{u_1, u_2, \ldots, u_n\} について、次の性質が成り立ちます。
  • 直交性: 任意の iji \neq j に対して、 ui,uj=0 \langle u_i, u_j \rangle = 0 ここで、ui,uj\langle u_i, u_j \rangleuiu_iuju_j の内積を表します。
  • 正規化: 各ベクトルのノルムが1である。 ui=1またはui,ui=1 \|u_i\| = 1 \quad \text{または} \quad \langle u_i, u_i \rangle = 1
  • 基底: ベクトル空間内の任意のベクトル vv をこの基底を用いて一意的に表現できる。 v=c1u1+c2u2++cnun v = c_1 u_1 + c_2 u_2 + \cdots + c_n u_n ここで、cic_i はスカラーです。

線形独立なベクトルからグラムシュミットの直交化法を利用すると正規直交基底を求めることができます。

はるか
はるか
例えば、2次元の標準的な正規直交基底は e1\mathbf{e_1}e2\mathbf{e_2}
ふゅか
ふゅか
3次元の場合は e1\mathbf{e_1}e2\mathbf{e_2}e3\mathbf{e_3} の3つのベクトルが基底を形成しているんだよ!

3.1. 2次元 (R2\mathbb{R}^2)の場合

R2\mathbb{R}^2 の標準的な正規直交基底(標準基底)は次の2つのベクトルです。

e1=[10],e2=[01] \mathbf{e_1} = \begin{bmatrix} 1 \\ 0 \end{bmatrix}, \quad \mathbf{e_2} = \begin{bmatrix} 0 \\ 1 \end{bmatrix}

  • 正規化e1=12+02=1,e2=02+12=1 \|\mathbf{e_1}\| = \sqrt{1^2 + 0^2} = 1, \quad \|\mathbf{e_2}\| = \sqrt{0^2 + 1^2} = 1
  • 直交性e1e2=1×0+0×1=0 \mathbf{e_1} \cdot \mathbf{e_2} = 1 \times 0 + 0 \times 1 = 0

これらのベクトルは直交し、かつそれぞれのノルムが1であるため、正規直交基底を形成します。

任意のベクトルx=[xy]\mathbf{x} =\begin{bmatrix} x \\ y \end{bmatrix}とすると、

x=xe1+ye2\mathbf{x} = x\mathbf{e_1}+y\mathbf{e_2}

3.2. 3次元 (R3\mathbb{R}^3)の場合

3次元ユークリッド空間 R3\mathbb{R}^3 の標準的な正規直交基底(標準基底)は次の3つのベクトルです。

e1=[100],e2=[010],e3=[001] \mathbf{e_1} = \begin{bmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{bmatrix}, \quad \mathbf{e_2} = \begin{bmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}, \quad \mathbf{e_3} = \begin{bmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix}

  • 正規化e1=e2=e3=1 \|\mathbf{e_1}\| = \|\mathbf{e_2}\| = \|\mathbf{e_3}\| = 1
  • 直交性e1e2=0,e2e3=0,e1e3=0 \mathbf{e_1} \cdot \mathbf{e_2} = 0, \quad \mathbf{e_2} \cdot \mathbf{e_3} = 0, \quad \mathbf{e_1} \cdot \mathbf{e_3} = 0

これらのベクトルは相互に直交し、ノルムが1であるため、正規直交基底を形成します。

任意のベクトルx=[xyz]\mathbf{x} =\begin{bmatrix} x \\ y \\ z\end{bmatrix}とすると、

x=xe1+ye2+ze3\mathbf{x} = x\mathbf{e_1}+y\mathbf{e_2}+z\mathbf{e_3}

となります。

3.3. 関数空間 L2[0,2π] L^2[0, 2\pi]

関数空間 L2[0,2π] L^2[0, 2\pi] におけるフーリエ級数の基底も正規直交基底の一例です。具体的には、次の関数群が正規直交基底を形成します。

{12π,sin(nx)π,cos(nx)πn=1,2,3,} \{ \frac{1}{\sqrt{2\pi}}, \frac{\sin(nx)}{\sqrt{\pi}}, \frac{\cos(nx)}{\sqrt{\pi}} \mid n = 1, 2, 3, \ldots \}

これらの関数は次の特性を持っています。

  • 正規性: 02π(12π)2dx=1,02π(sin(nx)π)2dx=1,02π(cos(nx)π)2dx=1 \int_0^{2\pi} \left( \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \right)^2 dx = 1, \quad \int_0^{2\pi} \left( \frac{\sin(nx)}{\sqrt{\pi}} \right)^2 dx = 1, \quad \int_0^{2\pi} \left( \frac{\cos(nx)}{\sqrt{\pi}} \right)^2 dx = 1
  • 直交性: 02π12πsin(nx)πdx=0,02πsin(nx)πcos(mx)πdx=0(nm) \int_0^{2\pi} \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \cdot \frac{\sin(nx)}{\sqrt{\pi}} \, dx = 0, \quad \int_0^{2\pi} \frac{\sin(nx)}{\sqrt{\pi}} \cdot \frac{\cos(mx)}{\sqrt{\pi}} \, dx = 0 \quad (n \neq m)

この基底がフーリエ級数展開に関連しています。

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