ふゅか
はるか
直交系はベクトルや関数の集合で、互いに直交しているんだ。内積が0になるとき直交と言える。
1. 直交系
直交系とは、ベクトルまたは関数が互いに直交している集合のことを指します。直交性とは、2つのベクトルや関数の内積(積分)が0であることを意味します。具体的には、ベクトル
ui と
uj が直交するとは次の条件を満たすときです。
⟨ui,uj⟩=0(i=j)
関数の場合、ある区間 [a,b] 上で次の積分が0であるとき、関数 fi と fj は直交しています。
∫abfi(x)fj(x)dx=0(i=j)
直交系は正規化されている必要はなく、つまり各ベクトルや関数のノルム(長さ)は1でなくても構いません。
2. 正規直交系
正規直交系は直交系の中でも、各ベクトルや関数が正規化されている(ノルムが1である)ものを指します。つまり、ベクトル
ui について以下の2つの条件を満たします。
- ⟨ui,uj⟩=0(i=j)(直交性)
- ⟨ui,ui⟩=1(∀i)(正規化)
また、⟨ui,uj⟩はクロネッカーのデルタδijで表されます。
⟨ui,uj⟩=δij
関数の場合も同様で、ある区間 [a,b] 上で次の2つの条件を満たします。
- ∫abfi(x)fj(x)dx=0(i=j)(直交性)
- ∫abfi(x)2dx=1(∀i)(正規化)
正規直交系は、直交性に加えて、各要素のノルムが1であるため、計算や解析において扱いやすくなります。
はるか
正規直交系。これは直交していて、かつノルムが1のものを指す。
ふゅか
つまり、直交性に加えて各ベクトルが正規化されているってことだね!
3. 正規直交基底(完全正規直交系)
ベクトル空間 V における正規直交基底
{u1,u2,…,un} について、次の性質が成り立ちます。
- 直交性: 任意の i=j に対して、 ⟨ui,uj⟩=0 ここで、⟨ui,uj⟩ は ui と uj の内積を表します。
- 正規化: 各ベクトルのノルムが1である。 ∥ui∥=1または⟨ui,ui⟩=1
- 基底: ベクトル空間内の任意のベクトル v をこの基底を用いて一意的に表現できる。 v=c1u1+c2u2+⋯+cnun ここで、ci はスカラーです。
線形独立なベクトルからグラムシュミットの直交化法を利用すると正規直交基底を求めることができます。
はるか
例えば、2次元の標準的な正規直交基底は
e1 と
e2 。
ふゅか
3次元の場合は
e1、
e2、
e3 の3つのベクトルが基底を形成しているんだよ!
3.1. 2次元 (R2)の場合
R2 の標準的な正規直交基底(標準基底)は次の2つのベクトルです。
e1=[10],e2=[01]
- 正規化∥e1∥=12+02=1,∥e2∥=02+12=1
- 直交性e1⋅e2=1×0+0×1=0
これらのベクトルは直交し、かつそれぞれのノルムが1であるため、正規直交基底を形成します。
任意のベクトルx=[xy]とすると、
x=xe1+ye2
3.2. 3次元 (R3)の場合
3次元ユークリッド空間 R3 の標準的な正規直交基底(標準基底)は次の3つのベクトルです。
e1=100,e2=010,e3=001
- 正規化∥e1∥=∥e2∥=∥e3∥=1
- 直交性e1⋅e2=0,e2⋅e3=0,e1⋅e3=0
これらのベクトルは相互に直交し、ノルムが1であるため、正規直交基底を形成します。
任意のベクトルx=xyzとすると、
x=xe1+ye2+ze3
となります。
3.3. 関数空間 L2[0,2π]
関数空間 L2[0,2π] におけるフーリエ級数の基底も正規直交基底の一例です。具体的には、次の関数群が正規直交基底を形成します。
{2π1,πsin(nx),πcos(nx)∣n=1,2,3,…}
これらの関数は次の特性を持っています。
- 正規性: ∫02π(2π1)2dx=1,∫02π(πsin(nx))2dx=1,∫02π(πcos(nx))2dx=1
- 直交性: ∫02π2π1⋅πsin(nx)dx=0,∫02ππsin(nx)⋅πcos(mx)dx=0(n=m)
この基底がフーリエ級数展開に関連しています。