【方程式と有理数解】有理数解の定理の意味と具体例について



1. 方程式と有理数解
まず、有理数解とは、方程式の解が有理数で表されることを意味します。有理数とは、整数同士の分数として表せる数のことです。たとえば、\(\frac{1}{2}\), \(-\frac{3}{4}\), 5 などが有理数です。
1.1. 有理数解の存在を調べる方法
方程式において有理数解を見つけるために使える便利な定理として「有理数解の定理(rational root theorem)」があります。これは特に整数係数の多項式で使える方法です。
1.2. 有理数解の定理の内容
次の多項式を考えます。
\[ f(x) = a_n x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \cdots + a_1 x + a_0 \]
ここで、\(a_0\)と\(a_n\)はそれぞれ定数項と最高次の係数です。
\[ 解の候補= \frac{定数項 a_0の約数}{最高次の係数a_nの約数} \]
この定理によって、方程式の有理数解を候補としてリストアップし、代入して実際に解かどうかを確かめることができます。

1.3. 例
次の多項式を考えます。
\[ f(x) = 2x^3 – 3x^2 + 4x – 6 \]
有理数解の定理を使うため、定数項 \(a_0 = -6\) と最高次の係数 \(a_n = 2\) に注目します。
- 定数項 \(-6\) の約数は \(\pm 1, \pm 2, \pm 3, \pm 6\)
- 最高次の係数 2 の約数は \(\pm 1, \pm 2\)
したがって、有理数解の候補は次のようになります。
\[ x = \pm 1, \pm \frac{1}{2}, \pm 2, \pm 3, \pm \frac{3}{2}, \pm 6 \]
これらの候補を多項式に代入していくと、実際に解となるものを見つけることができます。
1.4. 有理数解が存在しない場合
すべての方程式に有理数解が存在するわけではありません。有理数解がない場合、その解は無理数(例えば、\(\sqrt{2}\) など)や虚数(例えば、\(i = \sqrt{-1}\))になることがあります。


2. 有理数解の定理の証明



方程式が有理数解をもつとする。 \(x = \frac{p}{q}\) を多項式 \(f(x)\) に代入します。このとき、\(p\) と \(q\) は互いに素である。
\[ f\left(\frac{p}{q}\right) = a_n \left(\frac{p}{q}\right)^n + a_{n-1} \left(\frac{p}{q}\right)^{n-1} + \cdots + a_1 \left(\frac{p}{q}\right) + a_0 = 0 \]
これを両辺 \(q^n\) を掛けて分母を消去すると次のようになります。
\[ a_n p^n + a_{n-1} p^{n-1} q + \cdots + a_1 p q^{n-1} + a_0 q^n = 0 \]
\[ q( a_{n-1} p^{n-1} +a_{n-2} p^{n-2} q \cdots + a_1 p q^{n-2} + a_0 q^{n-1} )=-a_n p^n \]
ここで、$-a_n p^n$と$q$とカッコの多項式の積は等しいため、$-a_n p^n$は$q$の倍数である。$p$と$q$は互いに素であるから、$a_n$はqで割り切ることができる。
次に、式を変形数ると次のようになります。
\[ p( a_n p^{n-1}+ a_{n-1} p^{n-2} q+\cdots + a_1 q^{n-1} )=- a_0 q^n \]
ここで、$-a_0 q^n$と$p$とカッコの多項式の積は等しいため、$-a_0 q^n$は$p$の倍数である。$p$と$q$は互いに素であるから、$a_0$はpで割り切ることができる。
したがって、有理解 \(x = \frac{p}{q}\) が存在するためには、\(p\) は定数項 \(a_0\) の約数であり、\(q\) は最高次の係数 \(a_n\) の約数である必要があります。
これによって、「有理解の候補は \(\dfrac{定数項 a_0の約数}{最高次の係数a_nの約数}\)」であることが証明されました。