【不等式テクニック】三角形とRavi変換の考え方と例題について



1. Ravi変換
\[ a = x + y, \quad b = y + z, \quad c = z + x \]
この変換を行うと、三角形の性質に基づく制約が自動的に満たされるため、三角形に関連する不等式の証明が簡単になることが多いです。
日本語では、Ravi変換と呼びますが、英語だとRavi transformation よりもRavi Substitutionと書かれていることが多いかなと感じてます。まぁ、実際に行っていることは、単なる置換なので。
1.1. Ravi変換の考え方
三角形の辺 を\( a \), \( b \), \( c \)としたとき、次の不等式を満たす。
\begin{cases}
&-a + b + c > 0 \\
&a - b + c > 0 \\
&a + b - c > 0
\end{cases}
このとき、
$$\begin{cases} &2x=-a + b + c > 0 \\ &2y=a - b + c > 0 \\ &2z=a + b - c> 0 \end{cases}$$
と置くと、$x>0,y>0,z>0$となり、三角形のもとの不等式と同値条件になる。ここで、$a,b,c$について解くと、
\[ a = x + y, \quad b = y + z, \quad c = z + x \]
となります。


2. 例題
$$(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)\geq abc$$
Ravi変換を利用すると、次のように変形できます。
\[ \begin{cases} (-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c) = 8xyz \\ abc = (x+y)(y+z)(z+x) \end{cases} \]
したがって、もとの不等式は以下の形に帰着します。
\[ (x+y)(y+z)(z+x) \leq 8xyz \]
この不等式を証明することで、元の問題が示されることになります。

次に、この不等式を証明します。まず、相加相乗平均の不等式を用いると、\(x > 0, y > 0, z > 0\) の場合に次の関係が成り立ちます。
\[ x + y \leq 2\sqrt{xy} \]
\[ y + z \leq 2\sqrt{yz} \]
\[ z + x \leq 2\sqrt{zx} \]
これらの3つの不等式をすべて掛け合わせると、次のようになります。
\[ (x+y)(y+z)(z+x) \leq (2\sqrt{xy})(2\sqrt{yz})(2\sqrt{zx})= 8xyz \]
したがって、不等式
\[ (x+y)(y+z)(z+x) \leq 8xyz \]
が成り立つことがわかります。また、等号が成立するのは、\( x = y \)、\( y = z \)、\( z = x \) である場合です。これより、\( x = y = z \) のときに等号が成立します。
以上より、不等式 \((x+y)(y+z)(z+x) \leq 8xyz\) が証明され、元の不等式も成り立つことが示されました。
3. 不等式以外の使用例
不等式証明だけなく、公式などにも使うと、きれいな形になる場合があります。
3.1. ヘロンの公式
$$S = \sqrt{xyz(x+y+z)}$$
ヘロンの公式によると、三角形の面積Sは
$$S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$$
が成り立ちます。ここで $s = \dfrac{a+b+c}{2}$であるので、Ravi変換を行うと、
$$s=\dfrac{a+b+c}{2}=\dfrac{x+y+y+z+z+x}{2}=x+y+z$$
ここで、
$$s-a=z\quad s-b=x \quad s-c = y$$
となるので、
$$S = \sqrt{xyz(x+y+z)}$$
3.2. 内接円の半径
$$r=\dfrac{\sqrt{xyz(x+y+z)}}{x+y+z}$$
内接円と三角形の面積より、
$$S=\dfrac{1}{2}(a+b+c)r$$
であるので、$a+b+c=2(x+y+z)$となるので、
$$r=\dfrac{S}{x+y+z}$$
先ほど求めたヘロンの公式より、
$$r=\dfrac{\sqrt{xyz(x+y+z)}}{x+y+z}$$