LaTeX & KaTexでシグマ∑を書く方法について

TeXやLaTeX、KaTeXを使って数式を書くとき、シグマ記号(Σ)の表記に迷ったことはありませんか?
単なるギリシア文字としての「Σ」と、総和記号としての「∑」では使い方が異なりますし、インライン数式とディスプレイ数式で見た目が変わることもあります。さらに、二重シグマや条件付き総和を表す際には、適切な書き方を知らないと意図しない表示になってしまうこともあるでしょう。
シグマ記号は、数学のあらゆる分野で使われる重要な記号です。たとえば、数列の和を表す基本的な総和記号から、行列の成分をすべて足し合わせる二重シグマ、無限級数の展開まで、さまざまな場面で登場します。
この記事では、TeX/LaTeXやKaTeXにおけるシグマ記号の基本的な使い方から応用的な記述方法までを、具体例を交えながらわかりやすく解説します。単なるシグマの表示方法はもちろん、総和記号の添字の扱い方、インライン数式とディスプレイ数式の違い、条件付き総和の書き方、多重シグマの記述方法など、体系的に理解できるように整理しました。これを読めば、シグマを使った数式を自由自在に表現できるようになるはずです。
ぜひ、記事の内容を参考にしながら実際に試し、自分の数式に応用してみてください。


例えば、単に「\Sigma」って書くとギリシア文字で、総和を表す場合は「\sum」を使うのよね。
- 1. はじめに
- 2. 大文字のシグマ (Σ)
- 2.1. 表示例
- 3. 小文字のシグマ (σ)
- 3.1. 表示例
- 4. 総和記号(シグマ記法)
- 4.1. 表示例
- 5. シグマ記号を含む式
- 5.1. 表示例
- 6. 二重シグマ
- 6.1. 表示例
- 7. シグマを使った級数展開
- 7.1. 表示例
- 8. インライン数式でのシグマ
- 8.1. 例1: 通常のインライン数式
- 8.2. 例2: \displaystyle を使ったインライン数式
- 9. 他のギリシア文字との組み合わせ
- 9.1. 表示例
- 10. 応用例
- 10.1. 例1: \(i, j\) ともに 1 から \(n\) までの重複なし総和
- 10.2. 例2: インデックスに不等式の条件をつける
- 10.3. 例3: 三重シグマ
- 10.4. 例4: 格子点を条件付きで足し合わせる
- 10.5. 例5: 総和の中で部分積をとる
- 10.6. 例6: 部分和をさらに掛け合わせる
- 10.7. 例7: \( \min(i,j) \) を用いた総和
1. はじめに
TeX/LaTeX、katexで数式を記述する際には、以下のような「モード」を使用します。
- インライン数式:
$ ... $
- ディスプレイ数式(ブロック表示):
\[ ... \]
や$$ ... $$
- 数式環境:
\begin{equation} ... \end{equation}
など
シグマ(Σ)記号を表示する場合、大文字のシグマ、小文字のシグマ、総和記号 など、いくつかのバリエーションがあります。ここではそれぞれの使い方を例とともに紹介します。
また、シグマのような大きな記号はtexでは大型演算子として分類されます。
2. 大文字のシグマ (Σ)
2.1. 表示例
\[ \Sigma \]
TeX/LaTeX ソース:
\Sigma
これはギリシア文字の 大文字のシグマ を表示するだけの例です。インライン表示したい場合は $ \Sigma $
のように記述します。
3. 小文字のシグマ (σ)
3.1. 表示例
\[ \sigma \]
TeX/LaTeX ソース:
\sigma
こちらは 小文字のシグマ を表示する例です。
4. 総和記号(シグマ記法)
4.1. 表示例
\[ \sum_{i=1}^{n} i \]
TeX/LaTeX ソース:
\sum_{i=1}^{n} i
\sum
が総和を表すシグマ記号です。- 下付き文字(始点)を指定するには
_
のあとに{...}
を使います(例:_{i=1}
)。 - 上付き文字(終点)を指定するには
^
のあとに{...}
を使います(例:^{n}
)。
インラインで書く場合は $ \sum_{i=1}^n i $
のように記述しますが、ディスプレイ表示に比べてシグマがやや小さく表示されるため、見た目を調整したい場合は \displaystyle
を併用します。
5. シグマ記号を含む式
5.1. 表示例
\[ S = \sum_{i=1}^{n} a_i \]
TeX/LaTeX ソース:
S = \sum_{i=1}^{n} a_i
シグマ記号を使って、数列 \(\{a_i\}\) の合計を表すときにしばしば利用される基本的な記法です。
6. 二重シグマ
1 つのシグマの中にさらにもう 1 つのシグマを含める「二重和」の例もよく使われます。

でも二重シグマになると、行列みたいな場面が出てくるわよね。

6.1. 表示例
\[ \sum_{i=1}^{m} \sum_{j=1}^{n} x_{ij} \]
TeX/LaTeX ソース:
\sum_{i=1}^{m} \sum_{j=1}^{n} x_{ij}
行列 \(X = (x_{ij})\) の要素和を表すシグマ記法の一例になります。
7. シグマを使った級数展開
7.1. 表示例
\[ \sum_{k=0}^{\infty} r^k = \frac{1}{1 - r} \quad (\lvert r \rvert < 1) \]
TeX/LaTeX ソース:
\sum_{k=0}^{\infty} r^k = \frac{1}{1 - r} \quad (\lvert r \rvert < 1)
このように収束条件を併記して書くことで、無限級数の意味を明確に示します。
8. インライン数式でのシグマ
インライン数式ではディスプレイ数式に比べてシグマが小さくなります。必要に応じて \displaystyle
を使い、サイズを強制的に大きくすることも可能です。
8.1. 例1: 通常のインライン数式
テキスト中で \( \sum_{i=1}^{n} i \) と書くと、シグマのサイズは自動的に小さく調整されます。
ソース例:
テキスト中で $\sum_{i=1}^{n} i$ と書くと...
8.2. 例2: \displaystyle を使ったインライン数式
テキスト中で $\displaystyle \sum_{i=1}^{n} i$ と書くと…
ソース例:
テキスト中で $\displaystyle \sum_{i=1}^{n} i$ と書くと...
とすることで、シグマを大きく表示できます。
9. 他のギリシア文字との組み合わせ
シグマ以外にもギリシア文字が登場する数式で、見栄えを整えるために数式モードを活用します。例えば、母平均を表す \(\mu\) や母分散を表す \(\sigma^2\) と組み合わせるケースなどです。
9.1. 表示例
\[ \mu = \frac{1}{N} \sum_{i=1}^{N} x_i, \quad \sigma^2 = \frac{1}{N} \sum_{i=1}^{N} (x_i - \mu)^2 \]
TeX/LaTeX ソース:
\mu = \frac{1}{N} \sum_{i=1}^{N} x_i,
\quad
\sigma^2 = \frac{1}{N} \sum_{i=1}^{N} (x_i - \mu)^2
10. 応用例
以下では、もう少し複雑なシグマ(Σ)記号の使い方を紹介します。複数のインデックスを用いたり、条件付きで要素を取り込むような数式は、より豊富な表現が可能になります。ぜひご自身のニーズに合わせてアレンジしてみてください。
10.1. 例1: \(i, j\) ともに 1 から \(n\) までの重複なし総和
\[ \sum_{\substack{i,j=1 \\ i \neq j}}^n \frac{1}{(i + j)^2} \]
- 下付きの \(\substack{ i,j=1 \\ i \neq j }\) により、「\(i,j\) は 1 から \(n\) までで、かつ \(i\neq j\)」という条件を明示しています。
\[
\sum_{\substack{i,j=1 \\ i \neq j}}^n \frac{1}{(i + j)^2}
\]
10.2. 例2: インデックスに不等式の条件をつける
\[ \sum_{\substack{i,j=1 \\ i + j \le n}}^n (i \cdot j) \]
\(\substack{i,j=1 \\ i + j \le n}\) のように、上下に自由に条件を書けます。
\[
\sum_{\substack{i,j=1 \\ i + j \le n}}^n (i \cdot j)
\]
三重シグマや多重シグマは、複数次元の総和を表現するのに便利です。たとえば、3 次元の格子点上の関数を合計する場合などに使われます。
10.3. 例3: 三重シグマ
\[ \sum_{i=1}^{p} \sum_{j=1}^{q} \sum_{k=1}^{r} f(i,j,k) \]
\[
\sum_{i=1}^{p} \sum_{j=1}^{q} \sum_{k=1}^{r} f(i,j,k)
\]
このように、複数の添字を連続させるだけで多重シグマを表現することができます。
10.4. 例4: 格子点を条件付きで足し合わせる
離散集合 \(\mathbb{Z}\) 上で、ある領域に含まれる点だけを合計する場合には、添字に「集合への所属」を明示します。
\[ \sum_{\substack{(i,j) \in \mathbb{Z}^2 \\ i^2 + j^2 \le r^2}} f(i,j) \]
- \((i,j) \in \mathbb{Z}^2\) は「\(i\) と \(j\) がともに整数である」ことを表します。
- \(i^2 + j^2 \le r^2\) によって、半径 \(r\) 以下の整数格子点のみを対象としています。
\[
\sum_{\substack{(i,j) \in \mathbb{Z}^2 \\ i^2 + j^2 \le r^2}} f(i,j)
\]
10.5. 例5: 総和の中で部分積をとる
シグマ(総和)とパイ(総積)を併用すると、例えば下記のような式を表現できます。
\[ \sum_{k=1}^n k \prod_{i=1}^k (a + i) \]
\[
\sum_{k=1}^n k \prod_{i=1}^k (a + i)
\]
- \(\prod_{i=1}^k\) は「\(i=1\) から \(i=k\) までの積」を表します。
- それを、さらに \(k=1\) から \(n\) までの総和としてまとめています。
10.6. 例6: 部分和をさらに掛け合わせる
シグマの結果を、さらに \(\prod\) の要素として扱うケースもあります。
\[ \prod_{m=1}^n \Bigl(1 + \sum_{k=1}^m a_k\Bigr) \]
\[
\prod_{m=1}^n \Bigl(1 + \sum_{k=1}^m a_k\Bigr)
\]
10.7. 例7: \( \min(i,j) \) を用いた総和
たとえば、配列要素の最大値や最小値を条件に入れて複雑な式を書くこともあります。インデックスに添え字だけでなく、最大値・最小値などの関数を組み込む例を示します。
\[ \sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^n \bigl(\min(i,j)\bigr)^2 \]
\[
\sum_{i=1}^n \sum_{j=1}^n \bigl(\min(i,j)\bigr)^2
\]
このように、サブルーチン的に \(\min\) や \(\max\)、あるいは条件演算子のようなものをシグマの内部で使用して式の柔軟性を高めることができます。