更新:2024/09/14

sinc関数の極限・積分・微分・グラフについて

はるか
はるか
sinc関数、知ってる?
ふゅか
ふゅか
うん!知ってる!sinc関数は \(\text{sinc}(x) = \frac{\sin(x)}{x}\) で信号処理でよく出てくるよね!

1. sinc関数とは

sinc関数は、信号処理やフーリエ解析などで頻繁に登場する関数で、次のように定義されます。

\[ \text{sinc}(x) = \begin{cases} \dfrac{\sin( x)}{ x} & (x \neq 0) \\ 1 & (x = 0) \end{cases} \]

ここで、\( x = 0 \) の場合は、\(\displaystyle\lim_{x \to 0} \frac{\sin( x)}{ x}\) を計算すると 1 になるため、特に 1 と定義されます。

1.1. 偶関数

sinc関数は偶関数である。

sinc関数は偶関数です。なぜなら、

\[ \text{sinc}(-x) = \frac{\sin(-x)}{-x} = \frac{-\sin(x)}{-x} = \frac{\sin(x)}{x} = \text{sinc}(x) \]

これにより、sinc関数のグラフは \( y \)軸に対して対称です。

2. sinc関数の極限

sinc関数の$x\to 0$の極限は次のようになります。

$$\lim_{x\to 0} \frac{\sin x}{x} = 1 $$

ふゅか
ふゅか
そういえば、極限の求め方っていくつかあるよね。三角形と扇形の面積を使ったはさみうちの原理とか。
はるか
はるか
うん、それとロピタルの定理。あと、マクローリン展開でも求められる。

2.1. 面積を利用

 

図のような、三角形と扇形の面積の不等式を考えます。

$$二等辺三角形OCB<扇形OCB<三角形OAB$$

したがって、

$$\frac{1}{2}\sin \theta < \frac{1}{2}\theta < \frac{1}{2}\tan\theta$$

$\theta > 0$のとき、$\sin\theta$で割ると、次のようになる。

$$1 < \frac{\theta}{\sin\theta} < \frac{1}{\cos\theta}$$

$$\cos\theta < \frac{\sin\theta}{\theta} < 1$$

ここで、$\displaystyle\lim_{\theta\to +0}\cos\theta =1$となる。

したがって、$\theta\to +0$の極限ははさみうちの原理より、

$$\lim_{\theta\to +0}\frac{\sin\theta}{\theta}=1$$

次に、$\theta<0$の時のsinc関数の極限を考えると次のようになります。

$$\lim_{\theta\to -0}\frac{\sin\theta}{\theta}$$

$x= -\theta$と置くと、$x>0$であるから、

$$=\lim_{x\to +0}\frac{\sin (-x)}{-x}$$

sinc関数は偶関数であるため、

$$=\lim_{x\to +0}\frac{\sin (x)}{x}=1$$

したがって、sinc関数の極限は次のようになる。

$$\lim_{\theta \to 0}\frac{\sin\theta}{\theta}=1$$

2.2. ロピタルの定理を利用

ロピタルの定理を使用すると次のようになります。

\[ \lim_{x \to 0} \frac{\sin x}{x} = \lim_{x \to 0} \frac{\cos x}{1} = \cos 0 = 1 \]

2.3. マクローリン展開

マクローリン展開を利用すると極限は次のようになります。

\[ \sin x = x – \frac{x^3}{6} + \frac{x^5}{120} – \dots \]

したがって、

\[ \frac{\sin x}{x} = 1 – \frac{x^2}{6} + \frac{x^4}{120} – \dots \]

\( x \to 0 \) のとき、高次の項は無視できるため、極限値は1になります。

3. 微分

sinc関数の微分は次のようになる。

\[ \frac{d}{dx} \left( \frac{\sin x}{x} \right) = \frac{x \cos x – \sin x}{x^2} \]

sinc関数の微分は商の微分法を用いて求められます。

\[ \frac{d}{dx} \left( \frac{\sin x}{x} \right) = \frac{x (\sin x)’ – (x)’\sin x}{x^2} \]

\[ =\frac{x \cos x – \sin x}{x^2} \]

4. 積分

sinc関数の不定積分は初等関数では表せませんが、「正弦積分関数(Si関数)」を用いて表されます。

\[ \int \frac{\sin x}{x} \, dx = \text{Si}(x) + C \]

ここで、

\[ \text{Si}(x) = \int_0^x \frac{\sin t}{t} \, dt \]

また、重要な広義積分の結果として、

\[ \int_0^\infty \frac{\sin x}{x} \, dx = \frac{\pi}{2} \]

があります。この積分はディリクレ積分と呼ばれます。

5. グラフ

5.1. 極値

極値を求めるには、 \( \text{sinc}'(x) = 0 \) となる \( x \) を探します。

\[ x \cos(x) – \sin(x) = 0 \]

これを整理すると、

\[ x \cos(x) = \sin(x) \]

したがって、

\[ \tan(x) = x \]

5.2. プロット

sinc関数のグラフは、減衰しながら振動する形状を持ちます。主要な特徴は以下の通りです。

  • 最大値: \( x = 0 \) で \( \text{sinc}(0) = 1 \)。
  • 零点: \( x = n\pi \)(\( n \) は 0 でない整数)の位置で零点を持ちます。
  • 振幅の減衰: 振幅は \( x \) の増加に伴い、減衰します。

グラフを描くと、中央から左右に行くにつれて波形の高さが減少し、波長は一定のままになります。

はるか
はるか
グラフも興味深い。振幅が減衰しながら振動する。
ふゅか
ふゅか
うん!そして、\( x = 0 \) での最大値は1!波の高さが徐々に小さくなるのが特徴的だよね。
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