生存関数の意味と性質、計算方法について



1. 生存関数
生存関数(Survival Function)は、統計学や生存分析(Survival Analysis)において、ある時点までにイベント(たとえば死亡や故障)が発生せずに生存している確率を表す関数です。この関数は、特に故障や耐久性の解析、医学研究、保険数理、金融リスク管理などの分野で広く利用されます。
生存関数 \( S(t) \) は次のように定義されます:
\[ S(t) = P(T > t) \]
ここで:
- \( T \) はイベントが発生する時間(例えば寿命や故障時間)を表す確率変数。
- \( t \) は具体的な時間。
- \( P(T > t) \) はイベントが時刻 \( t \) より後に発生する確率。
言い換えると、時点 \( t \) でまだ生存している(イベントが起きていない)確率を表しています。
- 生存関数は信頼度関数とも呼ばれます。
2. 生存関数の性質


2.1. 単調減少
生存関数は時間が経過するにつれて非増加(単調減少)します
\[ S(t_1) \geq S(t_2) \quad (\text{if } t_1 < t_2) \]
これは、時間が経つにつれてイベントが発生する対象が増えるためです。
2.2. 累積分布関数(CDF)との関係
累積分布関数 \( F(t) \) は、時点 \( t \) までにイベントが発生する確率を示します
\[ F(t) = P(T \leq t) \]
生存関数との関係は以下の通りです
\[ S(t) = 1 - F(t) \]
2.3. ハザード関数との関係
ハザード関数 \( h(t) \) は、時点 \( t \) でイベントが発生する瞬間の発生率を示します
\[ h(t) = \frac{f(t)}{S(t)} \]
3. 生存関数の計算例
ある機械部品の故障時間が、指数分布に従うとします。故障率(ハザード率)は \( \lambda = 0.1 \) (単位: 時間\( ^{-1} \))です。このとき、以下の質問に答えてください。
- 生存関数 \( S(t) \) を求めてください。
- この部品が10時間以上動作する確率を計算してください。
3.1. 生存関数の導出
生存関数 \( S(t) \) は、累積分布関数(CDF) \( F(t) \) を用いて次のように表されます
\[ S(t) = 1 - F(t) \]
指数分布の累積分布関数 \( F(t) \) は次のように表されるため
\[ F(t) = 1 - e^{-\lambda t} \] 生存関数 \( S(t) \) は次のようになります
\[ S(t) = e^{-\lambda t} \]
3.2. 10時間以上動作する確率
与えられた \( \lambda = 0.1 \) を代入すると、生存関数は: \[ S(t) = e^{-0.1t} \]
\( t = 10 \) のときの \( S(10) \) を計算します: \[ S(10) = e^{-0.1 \cdot 10} = e^{-1} \approx 0.3679 \]
したがって、この部品が10時間以上動作する確率は約 36.79% です。
4. 生存関数の具体例
4.1. 指数分布
イベント発生時間が指数分布(パラメータ \( \lambda \))に従う場合、生存関数は次のようになります
\[ S(t) = e^{-\lambda t} \]
4.2. ワイブル分布
ワイブル分布(パラメータ \( \lambda, k \))に従う場合、生存関数は
\[ S(t) = e^{-(\lambda t)^k} \]