更新:2025/03/09

チェビシェフの多項式の性質と一般項について

「この数列、どんな規則で並んでいるんだろう?」

数学を学んでいると、規則的に並ぶ数や式に出会うことがあります。チェビシェフ多項式もそのひとつで、まるで隠された暗号のように、次々と新しい項が生まれていきます。

「三角関数とどのような関係があるのか?」

「この多項式の一般的な形はどうなっているのか?」

この記事では、そんな疑問に答えながら、チェビシェフ多項式の一般項を探求していきます。

はるか
はるか
チェビシェフ多項式って聞いたことある?
ふゅか
ふゅか
うーん、名前だけは聞いたことあるけど、難しそうでちゃんと見てないなぁ。三角関数と関係あるんだっけ?
はるか
はるか
そう、\( \cos n\theta \) を \( \cos\theta \) の多項式で表すことができるやつ。

1. チェビシェフ多項式 \( T_n(x) \) の一般項

チェビシェフ多項式 \( T_n(x) \) は、\( x = \cos \theta \) とおくと、以下の式で表されます。

\[ T_n(x) = \cos(n \theta) \]

この式は、$\cos n\theta$は$\cos \theta$で表されるということを意味する。

1.1. 証明

\(\cos n\theta\) を \(\cos\theta\) のみを用いた多項式で表せることを数学的帰納法で証明する。

まず、基底の場合を確認する。\(n = 0\) のとき、

\[ \cos(0\theta) = 1 \]

となり、これは \(\cos\theta\) を含む多項式の形になっている。また、\(n = 1\) のとき、

\[ \cos(1\theta) = \cos\theta \]

であり、明らかに \(\cos\theta\) の多項式になっている。したがって、\(n = 0,1\) の場合については成立する。

次に、ある整数 \(n\) に対して、

\[ \cos(n\theta) = P_n(\cos\theta) \]

および、

\[ \cos((n+1)\theta) = P_{n+1}(\cos\theta) \]

の形で表せると仮定する。これをもとに、\(n+2\) の場合も同様の形で表せることを示す。

加法定理を利用すると、

\[ \cos(n+2)\theta = \cos(n+1)\theta \cos \theta - \sin(n+1)\theta \sin \theta \]

が成り立つ。ここで、仮定より \(\cos(n+1)\theta\) は \(\cos\theta\) のみを用いた多項式で表される。また、\(\sin(n+1)\theta\) についても、\(\sin^2\theta = 1 - \cos^2\theta\) を利用すれば、\(\cos\theta\) だけを用いた式に変形できる。

さらに、\(\cos(n+2)\theta\) を求めるために、加法定理の別の形である

\[ \cos(n+2)\theta = \cos n\theta \cos 2\theta - \sin n\theta \sin 2\theta \]

を考える。ここで、\(\cos 2\theta = 2\cos^2\theta - 1\) および \(\sin 2\theta = 2\sin\theta\cos\theta\) を用いると、

\[ \cos(n+2)\theta = \cos n\theta (2\cos^2\theta - 1) - \sin n\theta (2\sin\theta\cos\theta) \]

となる。この式に対し、\(\sin n\theta\) を\(\cos\theta\) のみを用いた多項式に変換すれば、\(\cos(n+2)\theta\) もまた \(\cos\theta\) の多項式として表せることがわかる。以下の漸化式を導くこともできる。

\[ \begin{align*}\cos(n+2)\theta &= 2\cos\theta \cos(n+1)\theta - \cos n\theta \\ &= 2\cos\theta P_{n+1}(\cos\theta)-P_n(\cos\theta) \end{align*} \]

したがって、$n+2$の時も成り立つ。

以上より、数学的帰納法により、すべての自然数 \(n\) に対して、\(\cos n\theta\) は \(\cos\theta\) のみを用いた多項式で表されることが証明された。


ここで登場した漸化式

\[ \cos(n+2)\theta = 2\cos\theta \cos(n+1)\theta - \cos n\theta \]

これを使って、次のように表されることがあります。

\[ T_{n+2}(x)= 2x T_{n+1}(x) - T_{n}(x) \]

という漸化式を求めることができる。

2. チェビシェフ多項式の例

チェビシェフ多項式を求めてみましょう。

\[ \begin{aligned} T_0(x) &= 1 \\ T_1(x) &= x \\ T_2(x) &= 2x^2 - 1 \\ T_3(x) &= 4x^3 - 3x \\ T_4(x) &= 8x^4 - 8x^2 + 1 \\ T_5(x) &= 16x^5 - 20x^3 + 5x \end{aligned} \]

3. チェビシェフ多項式の一般項

ここでは、チェビシェフ多項式 \( T_n(x) \) の一般項

\[ T_n(x) = \frac{1}{2} \left( \left( x + \sqrt{x^2 - 1} \right)^n + \left( x - \sqrt{x^2 - 1} \right)^n \right) \]

3.1.  三項間漸化式の確認

チェビシェフ多項式は以下の漸化式を満たします:

\[ T_{n+2}(x) = 2x T_{n+1}(x) - T_n(x) \]

 

3.2. 特性方程式の導出

漸化式

\[ T_{n+2} = 2xT_{n+1} - T_n \]

の特性方程式を求める。

\[ r^2 - 2x r + 1 = 0 \]

を解くと、解の公式より、

\[ r = \frac{2x \pm \sqrt{(2x)^2 - 4}}{2} \]

\[ r = x \pm \sqrt{x^2 - 1} \]

となります。この特性方程式の解 \( r_1, r_2 \) に対し、一般解は

\[ T_n = A r_1^n + B r_2^n \]

となります。ここで、\( r_1 = x + \sqrt{x^2 - 1} \), \( r_2 = x - \sqrt{x^2 - 1} \) です。

初期条件を考えると、

  • \( T_0(x) = 1 \)
  • \( T_1(x) = x \)

を満たすように \( A, B \) を決定します。

まず、\( n = 0 \) のとき

\[ T_0(x) = A r_1^0 + B r_2^0 = A + B = 1 \]

次に、\( n = 1 \) のとき

\[ T_1(x) = A r_1 + B r_2 = A(x + \sqrt{x^2 - 1}) + B(x - \sqrt{x^2 - 1}) = x \]

この連立方程式を解くと、\( A = B = \frac{1}{2} \) 。

したがって、一般解は

\[ T_n(x) = \frac{1}{2} \left( (x + \sqrt{x^2 - 1})^n + (x - \sqrt{x^2 - 1})^n \right) \]

となります。

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