はるか
ふゅか
知ってるよ!あの、相加平均と相乗平均の関係を一般化したやつでしょ?
1. 重み付きAM-GM不等式
重み付きAM-GM不等式(weighted AM-GM inequality)は、非負実数列 (a1,a2,…,an) と、その要素に対応する正の重み(係数)w1,w2,…,wn があり、これらの重みの和が
w1+w2+⋯+wn=1
であるときに次の不等式が成り立ちます。
i=1∑nwiai≥i=1∏naiwi
この不等式を記号を使わずに展開すると、
w1a1+w2a2+⋯+wnan≥ a1w1a2w2⋯anwn
2. 具体例
2.1. n=2,w=21 の場合
重み付きAM-GM不等式を考えるとき、
非負実数 a1 と a2 に対して、重み w1=w2=21 とすると次の式が成り立ちます。
i=1∑2wiai=w1a1+w2a2=21a1+21a2
i=1∏2aiwi=a121a221=a1a2
よって、不等式は次のようになります:
21a1+21a2≥a1a2
これはよく知られている 相加相乗平均 です。
はるか
まず、2つの値
a1 と
a2。重みはどちらも
21。
ふゅか
それなら、相加平均は
21a1+21a2 だよね!
はるか
相乗平均は
a1a2。2つの値を掛け合わせて、その平方根を取る。
2.2. n=3 の場合
非負実数 a1,a2,a3 に正の重み w1,w2,w3 があり、
重みの和が w1+w2+w3=1 であるとき、重み付きAM-GM不等式は次のようになります。
w1a1+w2a2+w3a3≥a1w1a2w2a3w3
2.2.1. 特殊な場合: w1=w2=w3=31
各重みが等しい場合を考えると、
31a1+31a2+31a3≥3a1a2a3
これは、3つの数の相加相乗平均を表しています。
2.2.2. 重みが均等でない場合
例えば、重み w1=21,w2=41,w3=41 のとき
21a1+41a2+41a3≥a121a241a341
このように、重み付きAM-GM不等式は、重み wi の分布に応じて柔軟に適用できます。
2.3. AM-GM不等式
- 非負実数列 a1,a2,…,an に対して、
- すべての重みが等しく、w1=w2=⋯=wn=n1。
- この場合、重み付きAM-GM不等式は以下の形になります。
i=1∑nwiai≥i=1∏naiwi
ここで、各重み wi=n1 を代入すると、
n1a1+n1a2+⋯+n1an≥(a1n1⋅a2n1⋅⋯⋅ann1)
したがって、
na1+a2+⋯+an≥na1⋅a2⋅⋯⋅an
この不等式の形は、AM-GM不等式になっています。
3. Jensenの不等式を用いた証明
重みの和が1ということで、Jensenの不等式が使えそうなので、凸関数−logxを利用して、Jensenの不等式を利用して証明してみましょう。
w1+w2+⋯+wn=1 より、Jensenの不等式を −logai について適用します。
w1(−loga1)+w2(−loga2)+⋯+wn(−logan)≤−log(w1a1+w2a2+⋯+wnan)
この式を整理すると、
−w1loga1–w2loga2–⋯–wnlogan≤−log(w1a1+w2a2+⋯+wnan).
両辺に −1 を掛けて符号を反転させると、
w1loga1+w2loga2+⋯+wnlogan≥log(w1a1+w2a2+⋯+wnan).
この両辺を指数関数で変換すると、
exp(w1loga1+w2loga2+⋯+wnlogan)≥w1a1+w2a2+⋯+wnan.
左辺は (a1w1)(a2w2)⋯(anwn)に等しいので、
a1w1a2w2⋯anwn≥w1a1+w2a2+⋯+wnan.
3.1. 捕捉
exp(w1loga1+w2loga2+⋯+wnlogan)が (a1w1)(a2w2)⋯(anwn)に等しい理由はexp(logx)=xになるからです。よく使われる、入れ替える対数関数の計算の性質の一つですよね。